日本女子史上2番目の若さで決勝進出だ! 世界66位の大坂なおみ(18)が、同20位のエリナ・スビトリナ(ウクライナ)に1-6、6-3、6-2と逆転勝ちした。自身初のツアー決勝に進むとともに、大会の日本女子では95年に伊達(現クルム伊達)公子が優勝して以来、21年ぶりの決勝となった。18歳11カ月での決勝進出は、90年沢松(現姓丹羽)奈生子の17歳1カ月に次ぐ若さ。今日25日正午開始の決勝で、同28位のキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)と対戦する。

 まさに大坂劇場だ。豪打でどよめかしたかと思えば、凡ミスの嵐でため息を誘う。相手など関係なしに、日本のテニスの聖地、有明コロシアムで独り舞台。たった1人の主演で一喜一憂を演じ、最後は「カモーン!」で締めくくり、大団円だ。「うれしい、本当にうれしい」。立て続けに、日本語が飛び出した。

 もがき苦しみ、最後は立て直した。第1セット、最初の自分のサービスゲームをキープしただけ。1オールから5ゲームを連取された。ぼこぼこ打って、ぼこぼこミスの山。相手が凡ミス4本に対し、大坂は19本の凡ミスを犯し、簡単に沈んだ。「自分の球があっちこっちに行っちゃった」。

 それでも、大坂を指導する吉川真司代表コーチが絶賛するのが「試合の中で立て直す力は才能」。第2セットからミスを減らし、パワー一辺倒からコントロールのテニスに修正。攻守の歯車がかみ合いだしてからは「相手はあまりファイトしてなかったみたい」と豪語する出来で、逆転に成功した。

 試合中に波があるのは、まだ18歳の証拠。プレーは山あり谷ありだが、ツアー自身初の決勝進出にも心は全く動じない。昨年11月のタイで行われたツアー下部大会で決勝に進んだことを例に出し、「前にも決勝を戦ったことがあるわ。大丈夫よ」。

 9月の全米3回戦で世界9位のキーズを相手に、最終セット5-1から大逆転を食らった。試合中に涙を見せ、試合後のクールダウンにさえ現れないほどショックを受けた。しかし、吉川コーチらの「誰もが通る道。これをどう生かすかが大事」という励ましで立ち直り、今大会の快進撃につなげた。

 決勝の相手のウォズニアッキは、鉄壁の守備力で10年に世界1位になった強豪。ツアー23度の優勝を誇り、大坂にとっては厚い壁だ。それでも「1回戦からプレッシャーなんてない」と胸を張る18歳は「大きい(優勝)トロフィーがいい」とはにかんだ。【吉松忠弘】

 ◆95年の伊達優勝VTR 第5シード、世界10位で出場。本戦6度目の挑戦で、準決勝は第1シードで同4位のマルティネス(スペイン)を相手に、第1セットは0-6と1ゲームも奪えない状況から、0-6、6-2、6-3と大逆転。大会日本人初の決勝に進み、第3シードで同6位のダベンポート(米国)に6-1、6-2とわずか3ゲームしか落とさない圧勝。ツアー通算5勝目を挙げた。

<大坂なおみアラカルト>

 ◆生まれ 1997年(平9)10月16日、大阪市生まれ。

 ◆家族 父レオナルドさんはハイチ出身米国人。日本人の母、環(たまき)さんとは日本語で会話。姉まり(20)もプロ選手で世界ランク704位、ツアー下部大会が主戦。

 ◆テニス 3歳で姉まりの影響で始める。大阪の靭(うつぼ)テニスセンターで練習していた。

 ◆米国移住 4歳で米国に移住し、フロリダのフォートローダーデール在住。

 ◆国籍 日本と米国の2つの国籍を持つ。「心は日本人。日本の食べ物も好き」。好きな食べ物はウナギ、焼き肉、すしと和食党。

 ◆夢 東京五輪に日本代表で出場するのが夢。女子国別対抗戦フェド杯など日本代表経験なし。

 ◆所属 日本協会にプロ登録していないため所属はない。プロ登録しなくても海外ツアー転戦には支障がない。

 ◆武器 時速200キロを超えるサーブ。全米では201キロを記録。女子最速記録は211キロ。

 ◆サイズ 身長180センチは錦織より2センチ高い。69キロ。