浅田真央(26=中京大)が、今季初戦のSPで首位と4・63点差の64・87点で2位につけた。調整が間に合わずジャンプの難度を落としたため、自己ベストから13・79点も低い点数だったが、光ったのが難しく芸術的なステップ。まだ完璧ではなく評価は伴わなかったが、最終目標とする平昌五輪を見据え、新境地へと踏み出した。

 黒い羽のついた衣装をまとい、浅田が鳥になる。翼のように何度も手を折り曲げ、飛び立つように氷の上をつま先で歩いたり、自由自在に滑る。スペインのファリャ作曲の「リチュアルダンス」は、踊り子が悪魔払いをする様子を描いたもの。ピアノの音に合わせ、妖しい目つきで滑り終えると、ほっとしたような笑みを浮かべた。「今の状況、調子の中で自分ができるすべてを出せた」と安堵(あんど)した。

 予告通り、代名詞であるトリプルアクセルを封印。連続技も2つの3回転ではなく3回転-2回転にするなど、ジャンプの難度を下げたため得点は自己ベストからは約14点も低かったが、想定内。「満足はしているし、次につながる」と及第点をつけた。光ったのが終盤のステップ。「ほとんど休むところがない。すごく激しくて、1つ間違えると転んでしまう」と言うほど。難しい故にまだ完ぺきではなく、点数は最高レベルの4を得られなかったが、観客からはひときわ大きな拍手が起こった。

 この難しいステップの秘密は今季のエキシビションにある。バッハのチェロ曲に合わせたプログラムは、フィギュアの原点である図形を描くような動きやバレエの動きがちりばめられている。今夏のショーでこれを披露した浅田は「基礎が詰まっている。これを滑れば練習になり、試合も楽しく滑れるようになる」と目を輝かせていた。

 「今日の演技は自分としては最高のレベルではない」。今出来ることは出し切ったが、ジャンプもステップも目指すのはもっと高いところにある。フリーではSPと同曲をオーケストラアレンジで滑る。これも新たな試み。「すごく楽しみ」。挑戦し続ける浅田は、さらに進化を遂げそうだ。