羽生結弦(21=ANA)がフリーで197・58点、今季世界最高となる合計301・47点で連覇を達成し、6季連続のGPファイナル(12月8日開幕、フランス・マルセイユ)出場を決めた。4回転ジャンプ4本のうち3本を成功させ、自身3度目となる大台の300点超えを果たした。今大会前、4年前から指導を受けるブライアン・オーサーコーチ(54)と腹を割って意見を交換。より絆を深め、進化した演技を披露した。

 「もうちょっとだな」と演技後、羽生は首をかしげながらも笑った。最初の4回転ループ、続く4回転サルコーは成功したが、連続技の最初の4回転サルコーで転倒。だが、そこで流れは止まらない。最後の4回転トーループ、それ以外のジャンプを難なくまとめ、流れるような演技で優勝を決めた。しかも昨年のNHK杯、GPファイナルに続く3度目の合計300点超え。1つのジャンプミスに「まだまだ」と悔しがったが、それより「ほっとした」。今季3戦目にして、やっと落ち着いて、フリーを滑りきった。

 そんな羽生の姿に、恩師オーサー氏も「うれしい。リラックスして演技している」とうれしそうだった。ソチ五輪前からタッグを組んで4年目。今季、実は2人の関係は危うくなっていた。羽生は今季、世界初の4回転ループという大技を手に入れ、ショートプログラム(SP)で2本、フリーで4本、計6本の4回転ジャンプに挑戦する決意を固めた。

 オーサー氏は羽生の挑む姿勢に敬意を表しつつも、ジャンプにこだわり、4回転ループばかり練習することに疑問を持っていた。スケートカナダの際には「4回転ループという新しいおもちゃを持った子供のようだ」と冗談めかしながらも、痛烈に批判していた。

 このままではいけない。そう思って2人は心の内をさらけ出してぶつかった。オーサー氏は「トータルパッケージを大事にしなさい」。一方の羽生は「ジャンプが決まらないとトータルにならない」。互いの意見をぶつけ合った結果、意識が変わった。練習でジャンプだけでなく、全体の振り付けにも気がまわるようになった。羽生は「本音を言えずもやもやしていた。4年目にしてだいぶ垣根がなくなった」。オーサー氏も「私たちの関係はこれから良くなっていく」。2人の思いが重なるのと呼応するように、演技もまとまってきた。

 2大会連続の金メダルを狙う平昌五輪は再来年の2月。その時期を見据え、今シーズンはピークをあえて年明け以降に持ってくるプランがあった。だが羽生は「ピークはファイナルにきてもいいのかな。どんな状況でもいい演技をして、楽しみたい」。つかえていたものが取れたように表情は柔らかい。前人未到のファイナル4連覇も、軽やかに達成しそうだ。【高場泉穂】