現役引退した浅田真央(26)のフィギュアスケート人生を振り返る連載「浅田真央と○○」の第7回は、幼少期からの親友であり盟友の小塚崇彦さん(28)が登場。引退会見でのぞいた魅力を語る。

 会見でも終始笑顔を保とうとしていました。最後も泣きそうになりながら、必死にこらえて。自分のことをよく分かって、ファンの方が自分がどのようにいてほしいかを分かっているからこそ、そういう風に立ち振る舞える。それは彼女が競技生活で身に付けた人間力。ソチ五輪のフリーの時も「泣いてちゃいけない」と、演技後に涙で笑みを浮かべていましたよね。

 人がどういう風に思って、どうしてほしいかとかを考えるのがすごくうまい。もちろん芯を持った上で。だからこそ彼女の演技は魅力的だったと思います。いつも相手の求めに応じて考え尽くす。会見ではトリプルアクセルにどう声をかけたいか聞かれて「なんでもっと簡単に跳ばせてくれないの」。あれは僕的にパーフェクト。緊張する場で質問されてあの言葉がポンと出る。すごいなと。素直に出た彼女ゆえの回答だなと。

 小さい頃から知っていますが、彼女も他の選手同様に負けず嫌いです。どっちかというとフリーが強かったイメージがありませんか。SPでちょっとミスしてしまい、ミスを挽回するところで負けず嫌いを発揮している。よく「ノーミスで」とも言っていましたが、このスケート用語がここまで世の中に浸透したのは彼女が言い続けていたからでしょう。

 これからは勝負のリンクではなく、表現のリンクで滑ることになります。プロとして、見ている人が何を求めているのか、それにどう応えるかがより重要になってくるかと思います。人間力あふれる彼女がどんな表現で演技をしてくれるのか、とても楽しみです。【取材・構成=阿部健吾】

 ◆小塚崇彦(こづか・たかひこ)1989年(平元)2月27日、愛知・名古屋生まれ。5歳で競技を始める。06年世界ジュニアで日本男子3人目の優勝。10年バンクーバー五輪8位、11年に世界選手権銀。15~16年限りで現役引退後、16年4月から所属先だったトヨタ自動車に入社。今年から雇用形態を変え、アジア地域へのフィギュア普及活動などに乗り出している。16年2月にはフジテレビ大島由香里アナウンサーと結婚した。