昨年の北京五輪で日本女子として56年ぶりに陸上女子100メートルに出場した福島千里(20=北海道ハイテクAC)が“限定出場”で8月の世界選手権(ベルリン)を目指す。29日、広島ビッグアーチで行われる織田記念陸上で今季初戦を迎える。昨年12月に発症した腰痛が完治せず、出場試合を減らさざるを得ない現状だけに、1戦必勝態勢で臨む。

 福島は初戦を翌日に控えた28日、大会会場で約1時間調整し、トラックの感触を確かめた。いよいよシーズン突入にも、どことなく表情はさえない。原因は腰痛。北京五輪後、疲労から発症し、一時はイスに座れないほど悪化した。ここまで十分な練習が積めず、「状態はまあまあです。腰は良くはなっているけど80%くらい」と話す。

 北京五輪を目指した昨年は、五輪標準記録突破のため連戦を余儀なくされた。疲労がたまり徐々に成績が落ちた。しかし、今年は腰痛再発の心配もあり、6月の日本選手権まで出場大会数を昨年の約半分の2、3戦にしぼる方向だ。中村宏之監督は「あまり無理はさせたくない。日本選手権でピークになればいい」と話す。

 逆転の発想で不安を取り払う。腰痛はあるものの、疲労なしで走れるメリットはある。痛みが出なければ、この時期でのタイムは昨年を上回っている。「いつ腰が痛くなるか分からない。自己記録は速いなあって思ってしまうけど出せる時に出さないと」。昨年11秒36の日本タイ記録を出したゲンのいい大会で日本記録更新を目標に掲げた。【松末守司】