フィギュアスケート前世界女王の浅田真央(18=中京大)が、五輪シーズン「開幕ダッシュ」で10年2月のバンクーバー五輪に弾みをつける。国際スケート連盟は5月30日(日本時間同31日)、GPシリーズ6戦の出場選手を発表。浅田は開幕戦のフランス杯(10月15日開幕、パリ)、第2戦のロシア杯(同22日開幕、モスクワ)の出場が決まった。フランス杯では世界女王の金妍児(韓国)といきなり激突するが、出遅れた昨季を教訓にして早期始動。開幕2連戦を万全の態勢で迎える決意だ。

 浅田が今季開幕戦フランス杯で、ライバルに重圧をかける。3月の世界選手権を初制覇した金と、ファイナル以外のGPシリーズで初対決が決まった。06年トリノ五輪銀メダリストで4季ぶり復帰のコーエン、08年世界選手権2位コストナーら強敵も顔をそろえる。同大会は五輪シーズンの新プログラム発表の場でもある。そこで優勝すれば、ライバルに与える精神的ダメージ、ジャッジに与える好印象は大きい。

 もう開幕ダッシュの準備は進めている。4月の世界国別対抗戦後、タラソワ・コーチのいるロシアに渡り、1カ月弱の合宿を行った。昨季は同コーチに師事することが決まったのが6月で、プログラムづくりはさらに遅れた。その出遅れが最後まで響いた。今年3月の世界選手権では4位と、05年のシニア転向後初めて表彰台を逃した。その苦い教訓を生かした。関係者は「決定ではないが今回の合宿で曲の候補は挙がっている」と明かす。現在は一時帰国中だが、6月に再度ロシアに渡り、プログラムの完成を目指す。

 GPシリーズは各選手最大2大会出場できる。当初、浅田はロシア杯と、11月5日から長野で行われるNHK杯の出場を希望していた。だが世界選手権3位までに与えられる、翌シーズンの優先出場権を失い、フランス杯に回ることになった。フランス杯の翌週にロシア杯出場という強行日程になったが「今からそれに合わせて調整していけば問題ない。時差も移動も少なくロシアを拠点に練習できる」と、関係者はメリットを強調した。

 開幕2連勝すればGPファイナル(12月3日開幕、東京)進出一番乗りが決まり、再び腰を据えた調整ができる。来年2月のバンクーバー五輪に照準を合わせるためにも、早期始動と開幕ダッシュがもたらす効果は大きい。7、8月にはタラソワ・コーチが来日予定。悲願の五輪金メダルへ抜かりはない。【高田文太】