広島市と長崎市が2020年夏季五輪開催の検討に入ったことで、広島市の秋葉忠利市長(66)と長崎市の関係者が13日、初めて日本オリンピック委員会(JOC)を訪問した。事情説明と、今後、課題をクリアするためのアドバイスを求めるのが目的だ。JOC側は市原則之専務理事が対応し、約10分ほど会談した。また、この日、国際オリンピック委員会(IOC)の幹部は2都市での共同開催を認めない考えを示した。

 会談を終えた秋葉市長は、会見で必死に訴えた。「さまざまな課題があるので、検討委員会を立ち上げて、早いうちにJOCからアドバイスをいただきたい」。突然の五輪招致表明のおわびと表敬の意も込めて、わずか10分ほどのJOC訪問だった。しかし、市原専務理事は「熱意は伝わってきた」と話した。

 ただ、JOC側も、16年東京五輪招致が失敗した直後とあって、20年招致に対する見解もまとまっていないのが現状だ。竹田恒和会長は「新しい都市が五輪開催を希望していただいたことは五輪ムーブメントにつながる」と、一応は歓迎の意を表明した。

 しかし、その一方で「16年東京招致の分析ができていない。勝てる方程式がきちんとできた上でないと、4年後のことは申し上げられない」と、JOCとしても、今度は招致に失敗できないという厳しい現状であることを伝えた。

 また、この日、国際オリンピック委員会(IOC)のジルベール・フェリ五輪統括部長が「五輪憲章は1都市での開催を定めている。共同開催は認めておらず、現時点で答えはノーになる」と話したことについて、秋葉市長は「あえて言わせてもらえれば、4年後はどうなるか分からない」と強調。広島県の藤田県知事が「話がなかった」と不快感を表したことについても「まだ検討段階の話で都市の問題」と突き放した。

 今後は、広島市、長崎市ともに検討委員会をまず設置。来春までには、正式に立候補するかどうかを決める予定だ。JOC側は、東京招致の分析が終了するまで当分は、アドバイス程度にとどめることになる。【吉松忠弘】