<フィギュアスケート:世界選手権>◇エキシビション◇1日◇モスクワ

 【モスクワ1日=吉松忠弘】世界女王の安藤美姫(23=トヨタ自動車)が、来季は本格的に連続3回転ジャンプを導入する。4年ぶり2度目の世界選手権優勝から一夜明けたこの日、エキシビションが行われ、東日本大震災の被災者への思いを込めモーツァルトの「レクイエム(鎮魂曲)」で舞った。安藤は、今季2回しか行わなかった連続3回転を来季のプログラムに入れることを明言。そのために、すでに練習では3連続3回転ジャンプという大技にも成功している。14年ソチ五輪に向けて、安藤がさらなる飛躍を遂げる。

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 love(人はなぜ恋をするのか)」。安藤はエキシビションのナンバーを演じきると感極まった。観客は総立ちで、涙がほおを伝った。アンコールにバンクーバー五輪のSP曲「レクイエム(鎮魂歌)」が流れた。

 安藤が心を込めて日本に向けて選んだ曲だった。冒頭から氷上に身を横たえ、荘厳な調べが始まると、祈りを表現するために力強く舞った。「(今回の)メダルには特別の意味がある。07年の(金メダル)より大切にしたい」。今大会、安藤からの日本に向けた最後のメッセージだった。

 06年トリノ五輪、昨年のバンクーバー五輪の経験を経て、大きく成長した。「2回経験したのは大きい。五輪の後、吹っ切れた気がする」。それまではその日の気持ちや調子が、そのまま氷上の演技に出た。しかし五輪後に行われた昨年3月の世界選手権で「心からスケートを楽しめるようになった」と開眼した。

 その五輪も、安藤にとって14年ソチ五輪で3度目となる。26歳で迎えるソチは集大成だ。そのためにも、連続3回転ジャンプは欠かせない。「完成度を上げるために3-3を入れられるようにしたい」。今季は、昨年11月のGP初戦中国杯、12月のGPファイナルのSPで挑戦した。しかし、いずれも回転不足で認定されていない。

 安藤が跳ぶ3回転ルッツ-3回転ループは、決まれば基礎点が11・1点の高得点。習得するために、練習から何と3連続3回転ジャンプにも挑み、何度も成功させている。「連続3回転をやるためのエクササイズでやっている」。現在、試合で使うつもりはないが、もし試合で成功させれば史上初だ。

 すでに女子初の4回転ジャンパーとして歴史に名を刻んだ。気持ちも技も新たな境地を切り開いた安藤が「また1歩、大きく成長できたと思う」と、ソチに向け大きなステップを刻んだ。