<ラグビー:トップイースト>◇第1節◇11日◇東京・秩父宮ラグビー場

 釜石は元気です-。岩手県釜石市に拠点を置く釜石シーウェイブス(SW)が、日野自動車を41-0で破って完封発進した。東日本大震災の影響でチーム始動が2カ月以上遅れたが、急ピッチのチームづくりで開幕にこぎ付けた。津波で家を流されたフッカー小野寺政人(28)が後半にトライを奪うなど、被災者を勇気付ける快勝。来季のトップリーグ昇格へ、確かな1歩を踏み出した。

 釜石の男たちは強く、たくましく、そして頼もしかった。復興を心から願うラグビーファンに、釜石SWは勝利で健在ぶりを示した。9本の大漁旗が揺れる秩父宮のスタンドに、選手たちは笑顔で手を振った。

 震災から、ちょうど半年。誰もが特別な思いを持って臨んだ試合だった。後半5分にトライを決めた小野寺は、2月に引っ越した新居を津波で流された。連絡が取れなくなった舞夫人(28)とは、避難した寺で翌日に再会した。悲劇ばかりではない。5月には夫人が男の子を出産。「避難中におなかをぶつけてたりしたらと思うと、本当に無事に生まれて良かった」と振り返った。

 練習場は一時、避難所になり、選手たちは炊き出しや物資運搬に追われた。練習再開は、予定より約2カ月遅れの5月。週2日の休みは1日に減った。それでも、練習の厳しさを口に出す者は誰もいない。震災の苦しさを知り、乗り越えたからだ。

 「海の波」を意味するチーム名は、変える予定はない。高橋GMは「(津波の苦労を)乗り越えていくんだ、というプラス思考に変えていきたい」と話した。目標のトップリーグ昇格だけではない。もっと大きなものを背負い、釜石SWは戦い続ける。【森本隆】