レスリング王国日本の伝説の金メダリストたちが、ロンドン五輪の金メダル獲得を後押しする。64年東京五輪の金メダリスト5人が今日18日、約半世紀ぶりに集合。都内で行われている日本代表合宿を視察する。「アニマル」の異名で恐れられた渡辺長武氏(71)、男子で唯一五輪を連覇した小幡(旧姓上武)洋次郎氏(69)らが、88年ソウル五輪以来の金メダルを目指す選手たちにげきを飛ばす。

 きっかけは、今年80周年を迎える日本レスリング協会の企画だった。東京五輪の金メダリスト5人による座談会が計画され「せっかく集まるのなら」と代表合宿の視察が加わった。練習の冒頭では5人が現役選手にあいさつする予定。金メダル獲得への心構えが伝授される可能性もある。

 意外だが、5人が一堂に会するのは東京五輪後初めて。当時オクラホマ州立大に留学中だった小幡氏がすぐ米国に戻ったこともあって、全員が集まることはなかった。吉田氏は「懐かしいし、楽しみ。それが選手の刺激になるなら、うれしいですね」と話した。

 東京五輪で金5個を量産した裏には、日本協会の八田一朗会長によるスパルタ練習があった。情けない負けや規律違反では下の毛までそられた。深夜に起こされ、ライオンとにらめっこもした。「夢の中でも金メダル」を命じられ、金獲得に向けての強い精神力を植え付けられた。小幡氏は「今の選手も実力的には金メダルに手が届く。あとは気持ち。何とか頑張ってほしい」と話す。当時のレスリングは「金メダル以外は負け」という厳しさ。その「八田イズム」は、日本レスリング界に今も脈々と生きている。

 88年ソウル五輪金メダリストの佐藤満強化委員長は「すごい人たちが来てくれるのだから、今の選手に何かを感じてほしい」と、効果を期待する。昨年世界2位のフリー66キロ級米満ら金メダル候補はいる。「伝説の金メダリスト」の視線や言葉が、彼らを日本男子24年ぶりの栄光へと導く。