<フィギュアスケート:世界選手権>◇5日目◇30日◇フランス・ニース

 2年ぶり3度目の優勝を狙う浅田真央(21=中京大)が、1度もトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)に成功しないまま、今日31日のフリー当日を迎えることになった。午前、午後の練習で合わせて13回挑戦したがすべて失敗。ニース入り後、4位に終わった前日のショートプログラム(SP)、練習での計48回の挑戦はすべて不発に終わった。

 跳べない、どうしても跳べない。フリー前日の午後練習。西日が差し込む練習リンクに浅田の曇った表情があった。35分間の練習で6回。フリー演技の曲「愛の夢」をかけながらの1本も含めて、いずれも両足着氷、回転不足が続く。転倒もあったこの日午前中の練習と合わせて計13回挑戦したが、すべて不発。不安を抱えたままフリーの日を迎えることになった。

 出発前の日本では「1日1、2本は成功していた」という。自信を持ってフランス入りしたが、海を越えるとその好調さは消えた。前日のSPでは1年ぶりの成功を期して跳んだが、転倒。4位発進に終わり、「(調子が)下降気味になってしまった。(原因は)わからないです」とうつむいた。現地入りしてからこの日までの5日間で、48回すべて失敗している。

 3年ぶりに大会で跳ぶ予定の、もう1つの大技2連続3回転に関しては絶好調だ。この日の2回の練習で5回すべて成功させて新たな得点源として期待は持てる。あとは3回転半だけ。

 浅田はSP後に「悔いなく終わることが1番の目標です」と話した。その言葉からは3回転半に挑戦する決意がうかがえた。フリーでの挑戦を問われた佐藤信夫コーチは、「ここが目標ではない。モチベーションを下げないことが大事」と話し、佐藤久美子コーチも「あの子の支えなんでね」と述べるなど、容認する構えだ。

 連覇を狙った昨年はジャンプが安定せず、自己最低の6位に沈んだ。昨年12月に母親の匡子さんを亡くす不幸も乗り越え、たどり着いた雪辱を期す大舞台。無謀ともいえる挑戦の先に、果たして光は差すのか。【阿部健吾】