<体操:NHK杯兼ロンドン五輪代表最終選考会>◇初日◇男女個人総合予選◇4日◇東京・代々木第1体育館

 16歳の“仲良し”女子高生コンビが、初の五輪代表に大きく前進した。親友の寺本明日香(レジックスポーツ)と笹田夏実(帝京高)が、五輪2次予選の全日本選手権(4月)の合計と合わせ、162・050点で同点の2位につけた。その2位に6・450点の大差をつけた田中理恵(24)が首位で初の五輪代表を決定的にした。

 2種目目の段違い平行棒の前だった。寺本は、異様な緊張感に襲われた。会場のバナーに書いてある「五輪」という文字が目に入った途端、「頭の中が真っ白になった」。練習でもミスが多かった同種目で、蹴上がりが入らず、途中で止まった。うちひしがれる寺本に、同じ組だった笹田がそっと声を掛けた。「大丈夫だから」。寺本の顔から不安が消えた。

 笹田も段違い平行棒でリズムを失った。技を1つ抜いたが、何とか持ちこたえた。最終種目の床運動の前、笹田はまた寺本に声を掛けた。「床は落ちないから大丈夫」。寺本に笑顔が戻った。笹田は出場選手中トップの13・700点。寺本も4番目の13・450点を出し、2人そろって同点で2位に躍進した。

 「なっちゃん」「明日香ちゃん」と呼び合う親友だ。寺本は、笹田と同点2位と聞くと「親友と同じでめっちゃうれしい」。笹田も同点2位に「びっくりした」。昨年の強化選手合宿から「2人で五輪に行こうね」と、会う度に言い続けてきた。その約束が、現実になろうとしている。

 6年前の小学校5年の時に、8月の全日本ジュニアで初めて出会った。当時はともに「こういう人がいるな」程度の認識だった。しかしその後の日韓戦や遠征で一緒になる度に、話が弾んだ。昨年の代表6人の中で、最も低かった寺本の身長が138センチから140センチの“大台”に乗った。「(身長制限のある)ジェットコースターに乗れるかな。なっちゃんと2人で富士急に行きたいって言ってるんです」。

 笹田は幻のモスクワ五輪代表という母弥生さんを持つ体操のエリートだ。寺本は団地の庭にある鉄棒で育った雑草。対照的な2人だが最初に代表入りしたのは昨年の世界選手権に出場した寺本だった。笹田は右足首を痛め、昨年のNHK杯を棄権した。「だから、今日が一番、大事だった」(笹田)。ロンドン五輪開幕は7月27日。2人の高校2年生が、夏休みの大きな夢に近づいた。【吉松忠弘】