<フィギュアスケート:グランプリシリーズ第3戦:中国杯>◇2日◇上海

 GP初戦となった浅田真央(22=中京大)はショートプログラム(SP)62・89点で、首位に0・17点差の2位と上々発進を決めた。持ち味のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を構成から外し、精神的な重圧から解放。明るい曲調に乗り、軽やかに舞った。過去7戦で1勝と決して得意でないGP初戦だが、フリーで逆転優勝を狙う。

 中国の氷上で軽快に舞う浅田がいた。蛍光オレンジの発色鮮やかな衣装で、曲はジャズのスタンダードナンバー「アイ・ガット・リズム」。冒頭の2回転半ジャンプを難なく降りる。続く3回転フリップは回転不足となったが、「ここ何年かなかった明るくて元気なプログラム」という自信の演目に、観客からも手拍子が起きた。「SPの苦手意識があったけど、これで一山越えたかな。自分の気持ちが楽になった」と満面の笑みで演技を終えた。

 気持ちは軽かった。自らの支えのトリプルアクセル。代名詞との新たな“付き合い方”が、重圧を取り除いていた。「負担は少なくなりました」。試合前日の1日に心境を明かしていた。

 昨季までは試合で跳ぶかは、当日の判断。構成には入れており、「(会場で)また(跳ばない)構成に変えるのは負担」だったという。今季は初めから構成外。3年目を迎えた佐藤コーチとの話し合いで、「成功率が低いままではやらない」と納得できていた。

 「自分のスケートが一番したいと思うまで休んでみなさい」。昨季終了後には同コーチから諭された。昨年12月には母匡子(きょうこ)さんを亡くし、3回転半も成功できず失意で終えた昨季。これまでオフなど頭になかったが、思い切って2週間休んだ。氷を離れ、山梨の農園で野菜作り、乗馬など。今季への調整期間は短くなったが、「滑りたい」気持ちは戻った。

 楽しさを感じて練習を過ごし、10月のジャパンオープンでも手応えある演技。中国入り後も明るさは失われない。日中関係の悪化で警備員が常に帯同したが、「上海ガニが食べたいなあ。試合後だったらいい?」と関係者に無邪気に聞く姿もあった。

 衣装の色はシニア大会に初参戦した05年のSP「カルメン」と同じ。くしくもデビュー戦がこの中国杯だった。曲もジュニア時代以来のアップテンポなナンバー。滑ることが楽しかった「原点」を思い出す意味が、そこにも込められているのかもしれない。

 「日本のトップバッターで少し心配はあったけど、中国の人も日本の人も応援してくれてよかった。ファイナルに行きたいので、明日も自分の滑りをしたいです!」。元気いっぱいに宣言して会場を後にした。【阿部健吾】