吉田沙保里(30=ALSOK)らロンドン五輪レスリング金メダル勢が、東京五輪招致実現を訴えた。国際オリンピック委員会(IOC)評価委員会視察3日目の6日、吉田らはレスリング会場の東京ビッグサイトで委員たちを迎えた。当初レスリング界として予定していた五輪競技存続アピールは封印し、招致に集中して五輪への熱を伝えた。

 琴の音が流れる中、五輪競技のユニホームに身を包んだ子どもたちとともに評価委員を迎えたのは、吉田らレスリング金メダリスト4人だった。日本レスリング協会の福田富昭会長のあいさつ。「国際レスリング連盟(FILA)副会長、招致委員会副理事長の福田です」の後に「難しい立場です」。この一言に、微妙な立場がにじみ出た。

 レスリング会場が予定される東京ビッグサイト。しかし、五輪除外競技候補となり、20年東京大会で競技が行われるかは微妙だ。米満は「今日は招致に集中していたけど、複雑ですね」と心境を吐露。福田会長は「IOCとの協調が大切」と、招致と五輪競技存続は別であることを強調した。

 評価委員を迎えたのは地元の小学生とレスリング選手ら300人。当初は「レスリングを残して」などの横断幕で存続を訴える予定だった。公式会見には吉田が臨む計画もあった。しかし、すべては中止になった。

 会見をしたのは猪瀬都知事。鈴木徳昭戦略広報部長は「最後なので、お願いした。レスリングの除外問題とは関係ありません」と話したが、プレゼンのトップを務めたサッカーの澤とともに「招致活動2トップ」とされていた吉田の出番がなかったのは不思議だ。

 実は、FILAから「IOCを刺激しないよう、過激な行動は慎むように」という通達が届いていた。海外では金メダル返還などIOCに対する刺激的な行動も出てきたが、周囲からは自重を促す声もある。「既にIOCとは残す方向で話ができているから、FILAも慎重なのでは」と、ある関係者。3日のパーティーに出席した吉田も「私のことを知ってくれている方から、レスリングが残れるように祈っていると言われた」と、残留への手ごたえを口にした。招致と五輪残留、二兎を追う日本レスリング界の戦いは、9月7日のIOC総会まで続く。【荻島弘一】

 [2013年3月7日9時16分

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