全日本柔道連盟(全柔連)は27日、東京都文京区の講道館で、臨時理事会と全国理事長会議を開催した。助成金の不正受給問題を調査する第三者委員会の中間報告を受けた前日26日、上村春樹会長(62)は辞任を示唆したが、出席者から進退問題の質問は一切なし。トップ自ら説明することもなく“無風状態”で終わった。また、助成金を交付した日本スポーツ振興センター(JSC)が求める、不適切に集められた交付金の全額返還について、道筋が立たない問題も浮上した。

 組織のトップの進退が大きく報じられた当日。誰もが気になるだろう事柄が議題に上がることもなく、ただただ時間は過ぎた。27人の理事が集まった臨時理事会は約2時間半、全国の都道府県連の理事長49人が集まった全国理事長会議が約2時間。重複する出席者はいたが、1人も疑問に感じなかったのだろうか。

 理事会で上村会長が報告したのは、第三者委員会から中間報告を受けたことや自身が記者会見を開いたことだけ。「非常に重い、厳しい評価をしていただいた」と伝えたという。

 前日、実際には指導実績がない指導者がJSCから助成金を受けたことなどが、第三者委員会から組織として順法精神を欠いていたと認定された。同会長は「管理責任は大きい。近いうちに進退を明らかにしたい」と早くて6月の辞任を示唆していた。

 この日は出席者の前で進退問題に触れなかったことについて、「理由はありません。いろいろなことを考えた上で報告したい」と説明。翻って、出席者も問う態勢は皆無で、藤田副会長は「まだやると思っている。(進退は)向こうから言われることで、こっちから話はしない」。ある幹部は「暴力問題などの改革プロジェクトの先頭に立っており、(聞かないことが)暗黙の了解みたいな感じがあった」と証言した。

 この日は新たな問題も浮上した。強化委員会が、助成金を受ける指導者から金銭を徴収していた「強化留保金」について。第三者委員会の最終報告を待ち、JSCから全額返還を求められる見込みだが、宇野広報委員長は「組織上は不可能」と見解を述べた。

 留保金残高は現在約2350万円で、使った金も含めるとさらに多額になる。使用分の穴埋めを全柔連が行うことに「公益財団法人なので、そんなお金の使い方はできない」とした。収支に関しては厳格で、不正に使われた分の穴埋めでは明確な支出理由にならないという。上村会長も「今後考えなければ」と話した。

 中間報告では組織としての問題点を指摘された。トップの進退問題が注目され、身内からは何も疑問が起きない組織という実態。改革の道は険しい。