42年ぶりの快挙なるか。フィギュアスケートの全日本選手権は今日26日に長野市のビッグハットで開幕する。誰が勝っても初優勝となる女子シングルでは、11月の全日本ジュニアを制した「平昌五輪の星」樋口新葉(わかば、日本橋女学館中)が25日の前日練習に参加。13歳の優勝は、戦後では72年大会の渡部絵美以来、42年ぶりとなる。休養中の浅田真央、引退した安藤美姫らを超える年少Vに挑む。

 数日前、樋口は驚いた。「テレビドラマを見ていたら、自分が出てて。変な感じです」。初々しくはにかんだ。大会に向けたCMに出ることなど、まったくの想像外。目標を聞かれると「6位以内に入れれば、すごく驚くかな。いや、でも、頑張りたい」と、こちらも素直な反応が返ってくる。初出場の日本一決定戦、中学2年生には優勝など思い描けないのは当然だろう。ただ、本命不在の今年はどんな驚きがあっても不思議ではない。

 勢いがある。11月の全日本ジュニアを浅田、安藤と並ぶ中2で制し、2週間前のジュニアGPファイナルでも3位に入ったばかり。シニアでも難しい高難度の3回転ルッツ-3回転トーループを操り、どのジャンプも質が高い。この日の練習でも軽々と決めた。演技構成ではすでに今大会の先輩らに並ぶ実力はある。

 スケーティングにも勢いがある。日本連盟の小林強化部長が「靴にジェット噴射が付いているみたい」と評する圧倒的なスピードが武器。弾丸のような滑りから、148センチの小柄とは思えないダイナミックなジャンプをみせる。ジュニアと違い、シニアではフリーが30秒間長くなるため、「後半もスピードに乗るように」特訓してきたという。

 すでに練習では4回転ジャンプに挑戦するなど、センスは抜群だ。渡部が13歳で優勝した72年当時に比べ、日本女子の層は何倍も厚い。伊藤みどり、荒川静香、浅田、安藤と偉大な先輩を超える中2での優勝-。壁は高いが、「すごい楽しみです!」と弾む声には、可能性も宿っている。【阿部健吾】

 ◆樋口新葉(ひぐち・わかば)2001年(平13)1月2日、東京都生まれ。3歳の時に競技を始める。4歳で明治神宮外苑スケート場に移り、岡島功治コーチに師事。13年全日本ノービス優勝。今季はジュニアGPシリーズのチェコ大会2位、ドイツ大会優勝で、ジュニアGPファイナル3位。名前の由来は、21世紀が始まる01年1月2日生まれで「新」の1文字を入れた。特技は縄跳び。好きな食べ物はハンバーグ。148センチ。

 ◆全日本選手権女子シングルの優勝者

 最年少は34年の第1回大会を制した稲田悦子で当時10歳だった。戦後では72年の渡部絵美が13歳で制した。主要選手の初優勝時の年齢は、伊藤みどりが15歳、村主章枝が16歳、荒川静香が15歳、安藤美姫が16歳、浅田真央は16歳。