世界ランク11位の日本が、15年ワールドカップ(W杯)で日本を歴史的3勝に導いたエディー・ジョーンズ氏率いるイングランド(同4位)と敵地で対戦し、15-35で敗れた。2トライを奪った前半を15-10で折り返すなど、金星も期待されたが、後半に主力を投入した欧州の強豪に25点を奪われ、逆転を許した。フランカーのリーチ・マイケル主将(30=東芝)が攻守に圧倒的な存在感を見せるなど、19年W杯に向けた確かな収穫を得つつ、24日にはW杯の開幕戦の相手ロシアと対戦する。
8万人を超えるイングランドファンの歓喜の中、リーチはやや視線を上げ、一点を見つめながら、唇をかみしめた。「勝てる試合だった」。前半をリードで折り返すなど、強豪相手に確かな爪痕は残した。だが、健闘をたたえる敵地の声援が、悔しさを全身に伝えた。「後半の立ち上がり10分で集中力を欠いた。反則によって、自分たちで勢いを失ってしまった」。
桜のジャージーの誇りを体現するかのように、80分間体を張り続けた。鋭いタックルで相手を止めれば、課題のボール争奪戦でも何度もチームを救った。前半31分には、WTBさながらのステップで相手3人をかわし、右サイドを突破。4人目は豪快にはじき飛ばし、自らトライも奪った。
20点差の逆転負け。それでも、報道陣から収穫を問われると、「ラインアウトはほぼ100%取れた。防御でもプレッシャーを与えられた。ブレークダウンはもっと良くなる」。1つずつ、確認するように言うと「うれしいこともたくさんあった」。最後はわずかに表情を緩め、前を向いた。
15年W杯で日本を歴史的3勝に導いた敵将ジョーンズ氏との対戦。前日練習では、ピッチに正座し、日本ラグビーの成長に思いをはせた。自信を植え付けた15年W杯。大会後、世界の反応が違っていた。「『日本やるな』って。世界中の選手の見る目が変わった」。ニュージーランドから15歳の時に留学生として来日。「ラグビーを教わった」と語る日本が認められたことが、何よりうれしかった。
30歳で迎える19年W杯は「ニュージーランドで15年、日本で15年の特別な大会」と位置づける。留学先の札幌山の手高の佐藤監督からは「将来マイケルが主将になって、日本代表を強くしろ」と言われ続けた。来日時177センチ、76キロだった細身の少年は、日本の小学校の教科書に載っていた「たんぽぽ」という言葉を最初に覚え、大学、社会人と日本でプレー。文化とラグビーを学ぶ中で、恩師の言葉通りの大黒柱として、日本代表を世界で戦えるレベルまで引き上げてきた。
8強を目標に掲げるW杯開幕まで1年を切った。大切にしている言葉は「神に誓うな、己に誓え」-。「日本人のメンタルが一番強い。それをもう1度見せたい」とリーチ。日本代表の頼れる主将は、己の信じた道を、まっすぐに歩み続ける。【奥山将志】