<大相撲夏場所>◇千秋楽◇24日◇東京・両国国技館

 大関日馬富士(25=伊勢ケ浜)が初優勝を飾った。本割で大関琴欧洲(26)を首投げで下し、14勝1敗で並んだ横綱白鵬(24)との優勝決定戦を、左からの下手投げで制した。外国出身力士としては8人目、モンゴル勢としては3人目の優勝。来日した母ミャグマルスレンさん(51)のモンゴル料理が優勝の原動力になった。場所2日前にゴルフコンペに参加して厳重注意を受けたが、26日には「大関昇進記念コンペ」を予定。初優勝記念も兼ね、大手を振って開催する。名古屋場所でモンゴル勢3人目の「綱取り」を目指す。

 日馬富士はすべての力を左腕に込めた。白鵬との優勝決定戦。立ち合いで左を深く差して頭を付けると、幕内最軽量126キロの細い体から左下手投げを連発した。右手で横綱の右足をはらいながらの投げに、白鵬の手が土俵についた。「何も考えず、思い切っていくだけだった」。初優勝への執念が勝利を引き寄せた。

 白鵬とは13日目に全勝同士で対戦して敗れていた。真っ向勝負では分が悪い。しかし、決定戦直前、支度部屋で本割で白鵬に敗れた朝青龍から助言を受けていた。「(相手の得意な右)四つになるな。頭を付けろ」。兄のように慕う先輩横綱の助言を、忠実に実践して本割の借りを返した。

 初場所で初日から4連敗。昭和以降の新大関ワースト記録だった。春場所も10勝止まり。技に本来の切れ味が影をひそめた。4月に転機があった。小巻公平後援会長(66)から、同氏が経営する会社の新入社員へ訓示を頼まれた。考えた末に「夢と勇気を持って正しい道を歩いて行ってほしい」と話した。この言葉に自分の目も覚めた。「『大関らしい相撲を』と形にこだわりすぎて、自分の夢を忘れかけていた」。

 食生活も変えた。これまでは場所中も毎晩のように飲み歩くことが多かった。しかし、今場所前にモンゴルから母ミャグマルスレンさんを呼び寄せ、毎日モンゴルうどんなどの手料理をつくってもらった。「お母さんの料理は味が違うから」。場所前から飲み始めた青汁効果も手伝って、終盤も体力が落ちなかった。

 26日には部屋関係者と後援者約200人を集めて「大関昇進祝いゴルフコンペ」を予定している。場所2日前にモンゴル人力士でゴルフコンペを開催して、相撲協会に両横綱が厳重注意を受け、世間からも批判を浴びたため、一時は開催も危ぶまれていた。しかし、初優勝というオプションも付いて大手を振って開催できる。本人も「本当にうれしいです」。

 名古屋場所ではモンゴル人3人目の綱とりがかかる。武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は「高いレベルの内容で優勝すれば、そんな話題も出るだろう」と話した。もっとも日馬富士は「自分の相撲を一生懸命に取るだけ」と、今場所と同じように無心で戦う決意だ。【山田大介】