<大相撲名古屋場所>◇14日目◇25日◇愛知県体育館

 横綱白鵬(24)は悠然としていた。風呂から出てきた白鵬は、入れ替わりに風呂へ向かう琴欧洲とすれ違った。チラリと視線を送る大関に対し、前を向いたまま目を合わせない。「まだ笑うのは早いと思うので」と顔色ひとつ変えなかった。賜杯を争うライバルとは同じ支度部屋。取組前は右前方にいる琴欧洲に背中を向け、何度もしこを踏んだ。「ズドン!」と重い音を響かせ、威圧感を与えていた。

 土俵には最大の難敵がいた。日馬富士とは横綱昇進後6勝6敗。先場所の優勝決定戦では左を差され、振り回され、得意の右四つになれないまま下手投げで敗れた。鍵は白鵬の右と、日馬富士の左。出足のいい相手の右のど輪で起こされたが、必死に伸ばした右腕を相手の左脇から差し込んだ。差し勝ってからは「下半身が崩れなかったね」。スピード負けせず、足技にも動じず、最後は半身にしてから冷静に送り出した。

 自力で優勝できるのは、ただ1人だ。「(決定戦と)2番取ることは考えてない?」の問いに、ニヤリ。12日目に痛めた左ひじや突き指した左親指、体の不安を問う声には、左目を閉じてウインクした。琴欧洲の勝敗は、考えない。2場所ぶりの賜杯は、朝青龍に勝って自力でつかむ。【近間康隆】