<大相撲春場所>◇12日目◇25日◇大阪府立体育会館

 関脇把瑠都(25=尾上)が、大関日馬富士(25)を破って1敗を守り、大関昇進をぐっとたぐり寄せた。うるさい相手を捕まえ、最後は盤石の寄り。前日11日目は横綱白鵬(25)に敗れたが、対日馬富士は4連勝、今場所の大関戦は3戦全勝と立ち直った。上位で対戦を残すのは大関琴光喜(33)だけ。昇進のノルマとされる13勝以上には残り3日で2勝だけに、大きな1勝となった。

 把瑠都は突き押しで相撲の流れをつくった。立ち合い、もろ手で突き放すと、一気に押し込んだ。すばやい日馬富士の動きを、冷静に右を差して食い止め、最後は上手投げにきた相手を体を寄せて寄り切り。「立ち合いに迷いはなかった。落ち着いて相撲を取れた。(最後の寄りは)もうここだなと思った」と、会心の相撲を振り返った。

 白鵬に敗れた前日の取組後は落ち込んだ。宿舎に帰る車中は「ほとんど何も話さなかった」と、同乗した尾上部屋関係者は明かす。宿舎で映像を見た。「最低の相撲だ」と振り返った。立ち合いで得意の突き押しにいけず、横綱に捕まった。悔しくてこの日はいつもより早く目覚めた。普段より約30分も早く朝げいこを開始。場所前に購入したサンドバッグに、立ち合いをイメージしてタックルする独自のけいこを、普段の2倍近い13度も繰り返した。

 「迷いがいっぱい」と話した前日とは一転、この日は立ち合いで思い切りぶつかることだけ考えた。「緊張はしたけど体が硬くなっていない。いい緊張感」と落ち着いていた。審判長を務めた九重審判部長(元横綱千代の富士)からは「内容は非常にいい。危ない時も前なら土俵を割るところを、残して白星を勝ち取っている」と高評価も得た。

 これでノルマとされる13勝には、あと2勝と迫った。上位戦は琴光喜を残すだけで、13日目は下位の雅山と対戦。従来の大関昇進の目安だった「3場所33勝」に換算すれば、あと1勝までこぎ着けた。

 昨年から尾上親方には「エストニアに連れて行ってくれ」と声をかけられている。その真意は「大関に昇進した時は親御さんにあいさつに行かないと」(同親方)ということだった。東京・大田区に建設中の新しい尾上部屋の完成記念パーティーが6月12日に予定されているが、関係者は大関昇進とのダブル祝賀パーティーを期待する。はやる周囲をよそに本人は「まだ終わってない」と、気を引き締め直していた。【高田文太】