<大相撲名古屋場所>◇6日目◇16日◇愛知県体育館

 西前頭11枚目の高見盛(34=東関)が、ようやく懸賞をゲットした。同15枚目北勝力(32)の突きに一気に後退したが、土俵際で回り込んで逆転勝ち。連敗を2で止め、自分の取組に懸けられた今場所2度目の懸賞(1本)を手にいれた。夏場所までは永谷園が毎日5本懸けていたが、賭博問題でスポンサーの多くが撤退。封筒を大事そうにガッチリつかみ「ウナギ食い」宣言した。連勝を38に伸ばした横綱白鵬(25)と大関琴欧洲(27)、平幕の鶴竜(24)と豊真将(29)が無敗を守った。

 ようやく“初日”が出た。高見盛は感慨深げに手刀を切った。白い封筒をガッチリつかみ、上を向いて元気よく花道を歩く。手に持つのは現金3万円が入った懸賞。猛虎浪に敗れた4日目に続く2度目のチャンスで、何とかゲットした。「こうやって東関部屋を信じてくれる人がいて、うれしいっす」。わずか1本と薄くても、手にした重みは十分感じていた。

 これまではCM出演する「永谷園」をはじめ、多くの懸賞旗が土俵を回っていた。高見盛も昨年は計243本、夏場所は45本を獲得。しかし今場所は賭博騒動の影響で、「永谷園」など多くの企業が“休場”を決めた。6日目まで全体で73本。近年は毎場所1000本前後の本数があったが、協会関係者も「このペースでいけば200本いかないかも」という状態だ。

 デリケートな高見盛もうれいている。仕切りの時は「ちょっと落ち着かない。顔がかゆくなる」と体中をかきむしった。繁華街への外出も「そんな場合じゃない」と控え、手にした3万円は「ささやかに近所の居酒屋で一杯やる。ご当地は大事にしたいから、ウナギかな」と静かに名古屋メシを食べる。引き揚げる際には「気分転換で」と例年のサイダーではなく、カルピスを一気に飲み干した。

 角界と同じ土俵際に追い込まれながら、鮮やかな逆転勝ちを見せた。この日手にした懸賞を提供した企業のキャッチフレーズは、くしくも「正しい姿勢を考える

 プランニング」。日大の同級生だった元琴光喜関は去った。「今のおれらに必要なのは元気」というロボコップは、土俵に人生をかけている。【近間康隆】