大相撲の取組を賭けの対象にする「相撲賭博」に、角界の力士が参加していたことが3日、分かった。関係者によると、関与した力士は昨年騒動になった野球賭博にかかわった者が多く、幕内力士も含まれるという。八百長問題と違い、背後で暴力団とのかかわりが認められる可能性もある。八百長問題で揺れる日本相撲協会は、もう1つの賭博問題を抱えることになった。

 昨年の野球賭博をきっかけに、八百長問題が浮上したが、相撲賭博の事実も明らかになってきた。野球賭博事件で、警視庁組織犯罪対策3課に賭博開帳図利ほう助の疑いで逮捕された阿武松部屋の元幕下山本俊作容疑者(35)が、大相撲の取組を賭けの対象にしていたことをうかがわせるメールを、野球賭博の客となっていた力士らと送受信していたことが、捜査関係者への取材で分かった。

 これまでの捜査で、山本容疑者は野球賭博が角界にまん延するきっかけを作ったとみられており、組対3課は「相撲賭博」についてもメールの内容などを精査して、立件の可否を検討する。捜査関係者によると、山本容疑者は、指定暴力団山口組弘道会系組長(死亡)の勧めで06年に胴元を引き受け、元大関琴光喜関ら10人以上が、野球賭博の客だったとみられている。

 角界関係者によると、相撲賭博も実在し、顧客は一般人だけでなく力士も含まれる。力士の多くは野球賭博の客を兼ねており、昨年解雇された者や、現役の幕内力士も名を連ねているという。野球賭博に関与した力士は、名古屋場所を謹慎するなど協会からの処分を受けたが、相撲賭博は明らかになっていなかった。

 この関係者は「もし背後に暴力団とのかかわりがあったり、八百長につながっているとしたら、大変なことになる」と指摘した。競馬の場合、騎手らは馬券を買えない。勝ち負けにおいて手心が加わってしまう可能性があるためで、力士が相撲賭博にかかわれば、当該の取組に影響を与えるケースもあり得る。同時に、取組の勝敗が不健全に左右されかねない。

 メールをきっかけに八百長問題が騒ぎになっているが、相撲賭博は逮捕者が出る可能性を秘める。八百長問題のように、メールのデータを問題視した警視庁が所管の文部科学省へ提供するようなことがあれば、一気に問題は広がりをみせる。次々に不祥事が表沙汰になる相撲協会による負のスパイラルは、まだ底が見えていない。