<大相撲九州場所>◇8日目◇18日◇福岡国際センター

 西前頭6枚目の豊ノ島(29=時津風)が、1敗を守った。初顔合わせとなった東前頭13枚目の富士東(25)をはたき込んだ。本場所前、テレビのバラエティー番組に出演し、お笑いのセンスを発揮。新たなファンの拡大を実感しつつ、本業の土俵も盛り上げてきた。

 三役常連の実力は、やはり違う。相手の突っ張りをかいくぐって押し込んだ豊ノ島は、機を見てはたき込み。「あごも上がって、ちょっとまずいなと思った。ちょっと慌ててはたいちゃったけど…」。取組内容は反省したが、テレビの中と同様、絶妙の間で相手を転がした。

 本場所前、日本テレビ系のバラエティー番組「人生が変わる1分間の深イイ話」と深夜の「芸人報道」に出演した。得意の話術を生かし、芸人の今田耕司や雨上がり決死隊らと絡んだ。適度にボケたり、話に乗ったりしながら、番組を盛り上げた。

 九州入りすると、反響を実感した。町を歩いていると見知らぬ人から「テレビ、見ましたよ」と声をかけられた。後援者からは「親方になれなくても、しゃべりがあるから、芸能界でやっていけるな」と言われてしまった。

 もちろん、本業が何かは心得ている。「若い子がどんどん相撲を見てくれるように、ああいうところでアピールすることも大事だと思う。じいちゃんばあちゃんだけでなく、若い人にも相撲を見てもらえるきっかけになればいいと思っています」。

 本場所でも結果を出して、7勝1敗。九州場所は6年連続勝ち越し中と相性もいい。2年前は、優勝決定戦まで進出した思い出もある。7月には、長女希歩ちゃんが誕生。家を守る沙帆夫人は「取組の時だけは、寝かさないようにして娘とテレビを見ています。(負けた)嘉風戦だけ寝ていたので、験を担いでます」と陰ながら支援する。

 豊ノ島のもとには、場所後の番組出演依頼も届いた。どんな形で、本場所を終えるのか。「2年前を意識すると硬くなるけど、2年前のような相撲になればいいなと思っています」。土俵の外で笑いを取り、土俵の中では白星を取りにいく。【佐々木一郎】