<水泳世界選手権:競泳>◇29日◇上海

 ロンドン五輪切符を狙った日本の2トップは、ともに銀メダルに終わった。男子200メートル平泳ぎ決勝で北島康介(28=日本コカ・コーラ)は150メートルまで世界記録を上回るペースで泳いだが、終盤に失速してダニエル・ジュルタ(ハンガリー)に逆転され、2分8秒63でゴール。100メートル4位の惨敗から泳ぎを修正して調子を取り戻したが、金メダルには1歩届かなかった。

 視界の向こうにロンドンへの扉は見えた。前へ。はやる気持ちで必死に泳いだ。ゴールまであと10メートル。隣のジュルタが追い込んだ。ラスト5メートル、4、3、2、1、そして、天井の電光掲示板に「2」の数字が点灯。わずか0秒22遅れた。歓喜とため息が交錯する。肩で息する激戦の名残。北島は「苦しいの分かってトライした。悔しいけど、悔いはない。最後は久々に頭ん中、真っ白になったわぁ。やられたけど、こういうの必要」。強がったが無念さは伝わった。

 スタートから飛ばした。前半100メートルの入りは1分1秒40。世界記録も狙えるハイペースだった。風を切るように、ストリームラインをつくっていた。150メートルのターンは狙い通りだった。ただ、ジュルタにしっかり付かれたのは予想外。最後はエネルギーのタンクが底をつくかどうか。「ラスト25メートル。我慢して伸びようと思ったけど…。優勝狙えるなら狙っていくしかない。2番、3番じゃ意味がない」。敗れてなお、王者のプライドをかざした。

 25日の100メートルで4位と敗れ、ショックを受けた。手を差し伸べたのが、代表スタッフだった。狂ったフォームのチェックに始まり、硬くなった股関節周りをほぐし、そして精神的なケアまで。そんな思いに北島は奮起した。平井ヘッドコーチは「負けはしたけど、よくここまで戻した。あいつじゃないとできない」。そして五輪を見据え「100か200かと言えば、200の方が金に近い。確実に取れる方を先に準備した方がいい」とまで話した。

 思い描いた1年前のロンドン切符は逃した。来春の日本選手権に向け、再び鍛錬期を迎える。「諦めちゃいけないというのが僕のスタイル。来年に向けて、また変われるチャンスができた」。もう28歳。それでも世界のトップで勝負できることは実感できた。負けて得たものは大きい。【佐藤隆志】