<明治神宮野球大会>◇最終日◇19日◇大学の部決勝◇神宮球場

 大きな希望を抱かせる、神宮の杜(もり)での戦いだった。5度目の決勝戦に臨んだ東北福祉大(宮城=北海道・東北5連盟代表)は、2-3で東洋大(東都大学連盟代表)に敗れ大会初優勝を逃した。それでも先発の桑鶴雄太(2年=青森・光星学院)が、5安打3失点と力投。打線も9回に1点差と迫る粘りを見せ、今夏の全日本選手権で大敗した因縁の相手に善戦した。若いメンバーを中心に来季へ再スタートを切る。

 桑鶴は、東洋大ナインがつくる歓喜の輪を、黙って見詰めた。わずか1点が分けた明と暗。その差を桑鶴は声を震わせながら「意地というか、勝ちたいという思いが向こうの方が強かった」と話した。04年の全日本選手権以来の日本一には届かなかった。それでも、さらなる飛躍に向けて大きな糧となるマウンドだった。

 相手は、6月の全日本選手権の準々決勝で0-13の5回コールド負けを喫した強敵。その試合で登板しなかった桑鶴は、ビデオで予習して立ち向かった。最速147キロの直球と、多彩な変化球を低めに集め6奪三振。うち4個を直球で空振りに仕留めた。大会2連覇を決めた東洋大の高橋昭雄監督(60)をも「いい投手ですね。シュート系のボールが打ちづらかった」と、うならせた。

 そんな桑鶴も、光星学院では1年まで捕手だった。投手に転向する際、打力と肩の強さを評価していた同校の金沢成奉監督(42)からは反対された。それでも投手への魅力を捨てきれなかった桑鶴は、熱意を訴え続け自分の意思を貫いた。この日朝の新幹線で青森から球場に駆けつけた金沢監督は「頑固なところが、成長につながっているんでしょう」と話した。

 初の全国マウンドとなった、17日の創価大戦では1安打完封勝利。全国2勝目こそ逃したが同学年の森山一茂、中根佑二(1年)ともに形成する、若い投手陣でつかんだ準優勝だ。準決勝では斎藤佑樹(2年)擁する早大も破った。「力の差は感じなかった。この負けをバネにして来年、また東洋とやりたい」と桑鶴。将来性豊かな戦力で、来季こそ頂点をつかみ取る。【由本裕貴】