<神宮大会:関西国際大5-4八戸大>◇初日◇13日◇大学の部1回戦◇神宮

 大学の部で楽天のドラフト1位、八戸大(東北3連盟)・塩見貴洋投手(4年=帝京五)が初戦で散った。関西国際大(関西5連盟)戦で延長12回、サヨナラ負け。4回には自己最速タイの147キロをマークするなど11奪三振と「ドラ1」の実力を見せた。

 楽天星野監督の期待の左腕、八戸大・塩見が自己最多の166球を投じたが、報われなかった。4-4で迎えた延長12回2死二塁、フォークを左翼線へ運ばれサヨナラ負けを喫した。

 4-2で迎えた9回裏、4安打と味方の失策が絡み同点とされた。延長12回は自己最長。先月24日、東北福祉大との神宮大会代表決定戦では102球でノーヒットノーランを達成。リーグ戦でも球数は少ない。不運な内野安打などで12安打を許すも、未知の延長戦で集中力を切らさなかった。「疲れはあったけど気持ちが上回った」。大会後に退任する藤木豊監督(45)のために気力を振り絞った。

 だが、「初球からおかしかった」と本調子ではなかった。体が前のめりになって投げ急いだ。原因はドラフト1位の重圧。「観客の見る目が違った。プロに行く選手は抑えないといけないと思ってしまった」。藤木監督も「こんな悪い塩見を見たことがない」と肩を落とした。

 大阪から家族が応援に駆けつけていた。星野監督が直筆で「時代の立役者になれ」と書いたドラフトくじを母晴美さん(48)に渡すため八戸から持参した。小5の時、母が胃がんを患い入院。着替えを運び、手術にも立ち会った。そんな母へ、高校、大学と野球留学させてくれた恩返しの思いを込めた。だが、日本一はプレゼントできなかった。

 次はプロの舞台だ。視察した楽天上岡スカウトは「力まずしっかり投げていた。四球が少なく魅力的」と改めて評価した。「1球の重さが分かった。期待を裏切らないように頑張りたい」。大学NO・1左腕は、寂しそうに神宮を去った。【三須一紀】