阪神対広島 3回裏阪神2死一塁、木浪は右前打を放つ(撮影・上山淳一)
阪神対広島 3回裏阪神2死一塁、木浪は右前打を放つ(撮影・上山淳一)

阪神ドラフト3位ルーキー木浪聖也内野手(24=ホンダ)がまた打った。21日の阪神の沖縄・宜野座キャンプで行われた練習試合広島戦に、プロ初の一塁でスタメン出場。九里と岡田のローテ級右腕から先制の2点打を含む2安打を放ち、5試合の実戦成績は打率4割6分2厘、6打点の大暴れ。前楽天監督で今春から日刊スポーツ評論家に復帰した梨田昌孝氏(65)が“木浪のスゴさ”に迫った。【取材・構成=松井清員】

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木浪は本当に大したものだ。初回の1死満塁の好機で(前打者の)中谷が初球、簡単に内野フライを打ち上げた。3四球でもらったチャンス。さあ一気にいくぞという場面で、5番が外野フライも打てないのかと、ベンチのムードは最悪だ。その悪い流れを会心の一振りで断ち切り、流れを呼ぶ先制の2点打を放ってみせた。リーグ4連覇を目指す広島との注目の初対決。景気よく快勝できたのは木浪のおかげだ。

一番の長所はスイングがコンパクトで、しっかり振り切れることだ。初回は九里の内角141キロを完璧に捉えて右前に運んだ。大山とのエンドランを決めた3回2死一塁の第2打席も、岡田の内角147キロを右前に運んだ。この時、バットは折られたが、しっかり振り切っているから安打ゾーンに飛ぶ。ただでさえ新人は緊張し、アピールしようと力むことが多い。ローテ級の2人相手に冷静にボール球も見極め、自分の打撃で結果を出した。選球眼も抜群の実戦派で、立派のひと言だ。

2安打以上に目を見張ったのは左腕と対戦した第3打席だ。結果はレグナルトの148キロに空振り三振したが、直前カウント2-2からのファウルも体が開かず、最終球もしっかりしたスイングで振り切った。レグナルトは勝利の方程式入りが濃厚で、球の出所が分かりづらそうな好投手だ。直前、右の大山(空振り三振)と中谷(一ゴロ)は全く自分のスイングをさせてもらえなかった。だが木浪は体が開くこともなかった。2日前の打撃練習で対戦したガルシアからも痛烈な打球をセンターに運んでいた。左腕を苦にするタイプでもなさそうだ。

矢野監督がプロ初の一塁で起用したのは、高い打撃力をどこかで生かしたいと考えたからでテストは大正解。遊撃の鳥谷や北條をはじめ、一塁のマルテやナバーロらにも強い刺激を与え、チーム内競争を一層激しくしたことは間違いない。開幕1軍は確実だろうし、レギュラーの一角を取る可能性も十分ある。将来的にも広島田中広のように、パンチ力があり広角に打てる好打者になれる可能性を感じる。楽しみな新人が出てきた。(日刊スポーツ評論家)

阪神キャンプを訪問し糸井(左)と握手を交わす梨田本誌評論家(撮影・上田博志)
阪神キャンプを訪問し糸井(左)と握手を交わす梨田本誌評論家(撮影・上田博志)