矢野燿大監督(中央)は巨人に完封で連敗しガックリ(撮影・上山淳一)
矢野燿大監督(中央)は巨人に完封で連敗しガックリ(撮影・上山淳一)

投壊守乱の翌日は貧打の完封負け。矢野阪神が無惨な形で巨人に32年ぶり、平成初の開幕5連敗を喫して最下位タイに転落した。85年日本一監督の吉田義男氏(85=日刊スポーツ客員評論家)は、OBとして「悔しい」と無念を明かし、「内容が悪すぎる」と「カツ!」を入れた。

平成最後の伝統の一戦となる21日の必勝はもちろん、「ここが踏ん張りどころ」と猛虎の意地を期待した。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

寺尾 “伝統”が泣いています。長い歴史に彩られてきた一戦が、まるで暗黒時代の入口に立たされている心境です。

吉田 ずっと阪神にかかわってきた身としては、悔しいとしか言いようがないです。2リーグ分立後の阪神は5度リーグ優勝を果たしていますが、64年を除いて、すべて巨人に勝ち越した。阪神が優勝する条件は「打倒巨人」といえます。

寺尾 もともと長打力を欠くチームが、新外国人マルテはヨーイドンから故障で姿がなく、この日も阪神だけがセ・リーグで外国人不在の戦いを強いられている。投手力でもっていたが、防御率4・45はリーグ最低まで落ち込み、投打の歯車が合わなくなりました。

吉田 巨人との5試合をみても負けの内容が悪すぎます。一言いわせてもらうと「カツ!」ですな。わたしの現役時代の甲子園でのTG戦は常に緊張していて、殺気立っていました。一方どうしたら目立つことができるか、武者震いしながらプレーしたものです。

寺尾 対巨人の5試合は合計得点が「11対39」の完敗。甲子園初戦の前夜はミスの連鎖、この日はヤングマンを揺さぶれない。つまりホームで“地の利”を生かせていません。

吉田 ネット裏からみていると「何か」が足りない。サムシングですわ。打力が弱いから、オーダーも固定できない状況。でもそれ以外の何かがこのチームには欠けている。勝ち負けは紙一重。ゲームには流れがあって、どこでそれをつかむか。そこが監督のためらいといえる。攻撃は3回がひとつのポイントでした。

寺尾 2点を追う3回は木浪右前打、岩貞四球で流れが来た。ここで1番近本に犠打を命じます。1死二、三塁となりましたが、糸原の投ゴロでスタートを切った三塁走者木浪が三本間でアウトになって、糸井は見逃し三振で無得点です。

吉田 0-2で負けている場面ですが、1点や同点狙いより、一気にひっくり返す姿勢をみせてもよかった。つまり近本に打たせるべきだと思いました。前日もヒットを打っているし、この日の1打席目も内野安打。長打力に乏しいのは数字が示しているが、ここは監督の勝負勘といえます。

寺尾 ガルシア、メッセンジャーも消えました。チームの106失点は12球団ワースト、21日の先発西がトリデです。

吉田 センターラインは梅野が固まったし、ショートもしばらくは木浪で押すべきでしょう。わたしは今でも勝率5割を保てば優勝争いができると思っている。ここはペナントレース序盤の踏ん張りどころです。

3回裏阪神無死、木浪は右前打を放つ(撮影・加藤哉)
3回裏阪神無死、木浪は右前打を放つ(撮影・加藤哉)