ソフトバンクは今季、3年連続日本一で締めくくった。その2019年を日刊スポーツ評論家の浜名千広氏(50)が振り返る企画を「浜名論~プレーバック2019~」と題し、随時お届けします。

第1回は「今季のベストゲーム」。浜名氏は大逆転勝利を収めた9月8日のロッテ戦(ヤフオクドーム)を選んだ。【取材・構成=浦田由紀夫】

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浜名氏は終盤に大逆転を演じて勝利した9月8日のロッテ戦を、今季のベストゲームとした。ちょうど西武と激しい首位争いを繰り広げていた時期だった。ある意味、今年を象徴するような試合だったと振り返る。

浜名氏 あの試合はよく覚えている。リードを許していて負けムードだったにもかかわらず、終盤に一気に逆転して勝利した。逆転した時のベンチは、まるで優勝した時のようなムードだったのが印象的だった。

試合を振り返ろう。先制したが中盤に逆転された。相手は今季8勝15敗と苦手にしていたロッテ。6回を終了し2点リードされていた。7回に松田宣のソロで反撃ののろしを上げると、代打川島の適時打で同点。8回には代打明石の適時打で勝ち越した。その瞬間、一塁側ベンチから内川、松田宣らが総出で飛び出し、ガッツポーズした。

浜名氏 2日前に千賀がノーヒットノーランを達成して勢いに乗ったはずなのに、前日は完封負け。やっぱりロッテ相手はダメなのか、優勝は難しいのか、というような暗い、重たい雰囲気は否めなかった。そのなかでの大逆転。川島、明石ら渋い連中の活躍がチームにカツを入れたような試合だった。

今季は故障者が多く、ベストメンバーでは、なかなか戦えなかった。ベンチ入り全員の力がひとつにならなければいけなかった。優勝こそできなかったが、優勝まであと1歩だったことが、最後の日本シリーズへの布石だった。

浜名氏 シーズン終盤で優勝争いをしている時期とはいえ、なかなかあそこまで盛り上がることは少ない。ネット裏から見ていて、選手の中に「優勝は厳しいかな」とあきらめかけているような印象を感じていたが、そんなことはなかった。若手がしっかり働き、ベテランも頑張った。チームの思いが完全に一致してこそ勝てた試合。強いチームの証しだった。

ロッテ戦の8回裏ソフトバンク2死一、三塁、代打明石健志は右翼線に勝ち越しの2点適時打を放つ(2019年9月8日撮影)
ロッテ戦の8回裏ソフトバンク2死一、三塁、代打明石健志は右翼線に勝ち越しの2点適時打を放つ(2019年9月8日撮影)