今季の開幕がいつになるか見えない中、ソフトバンクがしっかり若手の底上げに成功した。昨秋と今春のキャンプ、オープン戦、練習試合を通して、日刊スポーツ評論家の浜名千広氏(50)は“MVP”に栗原陵矢捕手(23)を指名した。フォーム改造で打撃アップに成功。捕手だけでなく内外野守れる6年目の逸材に、打率を残せるプレーヤーへの成長を期待した。【取材・構成=浦田由紀夫】

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印象でも結果でも、栗原の存在が目立った。20年シーズンは新型コロナウイルス感染拡大の防止として、開幕を延期している異例の状況ながら、ソフトバンクの「新星」栗原の成長は誰もが認める。浜名氏は「ここまでのMVP」と急成長を認め、結果が出ているその打撃を分析した。

浜名氏 まず昨シーズンで1軍を経験したこと。そこで直球に差し込まれることを痛感したことが大きい。分かっていてもそれを実感することがまず第一。その課題を昨秋から今春のキャンプで取り組んできた。それが早い始動の構えだった。

栗原は昨年までに比べ、明らかに右足を上げるタイミングが早くなり、球を待つ態勢を早く作れている。

浜名氏 いい打者は必ず始動が早い。柳田、内川は代表的だ。さらに単純に速球に対応できる利点だけでなく、軸となる左足に体重をしっかり乗せることで直球を待っていても変化球が対応できる。それが一番大きい。

今春のオープン戦、練習試合の対外試合で通算44打数15安打、本塁打2本。打率は3割4分1厘となり、開幕1軍入りを狙う若手の中では、最高打率を残した。

浜名氏 3月1日のオープン戦で(阪神エドワーズの)内角低め150キロ直球を右翼席中段へ運んだ。実は1球目、151キロの内角高めを引っ張ってファウルにした。その後2球変化球を見送って、高さは違うが同じ直球をタイミングを修正して打ったのは評価できる。22日の練習試合の(ロッテ西野から放った)本塁打はカーブを打った。自分のスイングが完成しているからできることだ。

栗原は長打力も魅力の1つとなったが、浜名氏は打率を残せる技術の方が上だと分析する。

浜名氏 早く構えることができると球を見る時間が長くなる。するとインパクトも体に近い位置でできるから、どんな変化球でも対応できる。バットコントロールはもともといい方なので、打率が残せる打撃を完成させたと思っている。嫌な球はわざとファウルで逃げることができるし、打ち損じが少ない。捕手、一塁手、外野手どこでもいいから、スタメンで起用していけば、必ず打率を残してくれる。

◆栗原陵矢(くりはら・りょうや)1996年(平8)7月4日生まれ、福井県出身。春江工では2年春にセンバツ出場。3年時は高校日本代表主将。14年ドラフト2位で入団。打てる捕手としてレギュラーが期待された18年春季キャンプで左肩脱臼。19年は1軍32試合に出場した。捕手以外にも外野手もこなし、今年は自主トレで中村晃に弟子入り。今春キャンプから一塁手にも挑戦中。179センチ、75キロ。右投げ左打ち。