阪神は大型連勝もなく、追い上げムードが高まらない。昨年まで広島で監督を務めた日刊スポーツ評論家の緒方孝市氏(51)は、外国人選手ら個人に頼る戦いを理解した上で、状態を見極めた臨機応変な選手起用を提言した。

   ◇   ◇   ◇

阪神は2回に相手の失策をきっかけに2点を先制したが、この回に3点目が入っていれば、一気に試合を決められた可能性がある。1死一、三塁で北條がセーフティースクイズを狙ったが、失敗。広島遠藤は序盤に制球が定まらずに調子は良くなかった。阪神ベンチも、もう1点入れば大きいと考え、序盤ながら、指示を出した。成功していれば、さらに得点圏で主軸に打席が回り、遠藤をもっと早く降板させられたはず。こういう部分をきっちりとやっていかないといけない。派手に打ち勝つ強力打線が今年の持ち味かもしれないが、それだけでは連勝につながらない。

今年は開幕から外国人を中心にした打線を組んできた。大山やサンズ、ボーアが打って勝てば目立つ。ただこれを1年続けるのは難しい。ボーアも一時は対応していたが、さらに研究されて、速いボールと変化球で攻められている。新型コロナウイルスの影響で糸原、木浪といったつなぎの選手を欠いている影響も大いにあるが、打線は水ものという言葉があるように、打力に頼っては勢いというのは持続しないものだ。

広島打線は、岩田の低めの球を徹底的に我慢して見逃し、岩田からすれば、苦しい投球になった。これは1人の打者でやっているわけではない。この日に限ってみれば、個で戦うチームと打線で戦うチームというものが、顕著に表れた試合だった。

ただ掲げてきた方向性というのは、すぐに変えられるものではない。阪神はジグザグ打線にこだわらず、個々の打撃の状態を見ながら、状態のいい選手を使っていくことも必要だろう。時にはボーアに代えて、状況に応じた打撃のできる原口を一塁で使ってもいい。中谷の調子が良ければ、外野の先発で起用する。状態が悪ければ使わないだけの話だ。13連戦で厳しいところだが、2位という位置で戦っている。踏ん張って、チーム状態を上げてほしい。(日刊スポーツ評論家)

広島対阪神 8回裏広島、交代を告げる矢野監督(撮影・加藤孝規)
広島対阪神 8回裏広島、交代を告げる矢野監督(撮影・加藤孝規)