日刊スポーツ評論家の和田一浩氏(48)が、15日の巨人-中日戦をチェック。中日の捕手、木下拓の攻守わたる物足りないプレーを指摘した。

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野球という競技において、最も「重要」とされているポジションはどこだろうか? 個人的には「キャッチャー」だと思っている。私自身、捕手としてプロ入りしながら、キャッチャーとしてレギュラーになれなかっただけに、その重責は痛いほど分かっている。それだけに、今試合でスタメンマスクをかぶった中日木下拓は物足りないプレーが目立ちすぎてしまった。

2点を先制された直後の2回無死満塁。絶好の場面で打席が回ってきた。一番ダメなのが三振で、犠牲フライでいい場面。満塁で、1ストライクを取られるまでは死球の可能性がある内角と、犠牲フライを打ちにくい低めの変化球は捨ててもよかった。しかし、左腕高橋の初球、内角低めスライダーを打って遊飛。狙い球を絞れる状況でありながら、とても捕手を務める打者の打撃ではなかった。

守っても、捕手らしい粘り強さを見せられなかった。2回に無死二、三塁のピンチを招き、増田大を一ゴロ、投手高橋を三振に打ち取り、2アウトまでこぎつけていた。初回に本塁打を打たれている松原には、カウント2-2から内角低めの真っすぐがボール判定。ストライクでもおかしくない球だっただけに、落胆も大きかったのだろう。しかし、次に投げさせた球種は、この試合で1球しか投げていない125キロのカーブだった。真ん中高めに浮いて、手痛い2点タイムリーになった。

真っすぐと速い変化球のコンビネーションが武器の福谷にとって、カーブは得意な球ではない。1点差まで詰め寄り、このピンチを無得点に抑えれば、試合の流れは間違いなく中日に傾くと思われる場面。ここで持ち球の中でも優先順位の高くないカーブで失投。悔いが残る配球だった。

そして試合を決めたのは、3回2死一、三塁での守備だった。一塁走者が走って木下拓は二塁へ送球。しかし捕手から見て二塁ベースの右側に送球はそれ、キャッチした京田の走者へのタッチは空振り。捕手が投げた時点でダブルスチールのスタート切っていた三塁走者梶谷がホームにかえり致命的な1点を奪われた。

ダブルスチールは巨人ベンチのサインプレーで、送球がそれていなくても1点は失っていたかもしれない。しかし、この場面で重要なのは、捕手がダブルスチールのケアをしていたかどうか。捕球した木下拓は三塁を見ずに二塁へ送球したように見えた。巨人ベンチは、そうした癖を見抜いていたのかもしれない。

捕手は守りの要であり、捕手として培ってきた知識は打撃にも生かせる。それが生かせないなら、いいリードなどできるはずがない。チームの調子が上がらず頭がパニックになっているのかもしれないが、ここを乗り越えて真の正捕手を目指してほしい。(日刊スポーツ評論家)

巨人対中日 2回裏巨人2死二、三塁、松原聖弥に2点適時打を打たれた後、マウンドで肩を落とす福谷(右)。後方は阿波野投手コーチ(撮影・狩俣裕三)
巨人対中日 2回裏巨人2死二、三塁、松原聖弥に2点適時打を打たれた後、マウンドで肩を落とす福谷(右)。後方は阿波野投手コーチ(撮影・狩俣裕三)