交流戦で調子の上がらない巨人は、西武に1安打完封負けを喫した。一番の敗因といえば、なんと言っても7回を投げた与座を打てなかったことに尽きるが、0-3という得点差以上の完敗だった。

その原因は、先発したシューメーカーのピッチングだろう。クイックが苦手で、ボールを長く持つなど、盗塁をされないように努力はしていたが、いかんせんリズムが悪い。大事な場面や走ってきそうな場面で時間をかけるのはいいが、そればかりに気を取られているようなピッチングになってしまった。

守っている野手のリズムも狂う。残念ながら今の巨人の守備陣には、投手のリズムの悪さをフォローする実力はない。

4回裏だった。オグレディのレフト前タイムリーで1点を先制され、スクイズで追加点を奪われた。なおも2死一、三塁でダブルスチールで3点目も奪われてしまった。

シューメーカーを見ていると、走者を出すと手いっぱいになってしまう。投手に余裕がないのは、西武ベンチにも伝わるもの。スクイズにせよ、ダブルスチールにせよ、頭の片隅には入れておかなければいけない状況だが、そんな余裕は巨人ベンチにはなくなっていた。

守っている野手も、まるで意表を突かれたようにリズムを崩した。ウォーカーの送球は関係ないかもしれないが、ダブルスチールの際には小林の二塁への送球もワンバウンドになり、本塁に送球した中山もワンバウンド。三塁走者のオグレディのスタートが遅れただけに、どちらかの送球がしっかりコントロールされていれば本塁はアウトにできたタイミングだった。

ボールを長く持って盗塁を警戒するのも、投手にとっては必要な技術だが、優先順位はクイックを安定させる方が先決。クイックさえできれば、走られそうな場面だけボールを長く持ったりして、それほどリズムが悪くなることはない。

特に機動力を駆使する日本球界では、クイックを苦手にすると苦しくなる。シューメーカーにしろ、前日に先発したアンドリースにせよ、投球そのものは悪くない。

アメリカの野球は日本ほどボークの規定が厳しくないだけに戸惑いもあるだろうが、練習すればある程度は上達する。クイックはモーションが小さくなるため、多少はスピードが落ちる投手もいるが、うまくやれるようになればコントロールは良くなる。

すべての投球でできなくても、クイックを混ぜて投げられれば、打者のタイミングもずらせる。投手の立場から言うと、自分の投球ができずに打たれるのは悔いが残り、クイックをやりたくない気持ちも分かる。しかし、点を与えない投手になるためには、クイックは必須条件といってもいい。抹消期間があったときでも、徹底的に指導した方がいい。

やはりピッチャーのマウンドでの投球や立ち居振る舞いは、野手に影響を与える。そんな思いを強くした試合だった。(日刊スポーツ評論家)

西武対巨人 4回裏西武2死一、三塁、一走滝沢が二盗を決める間に三走オグレディ(手前)が重盗を決めて生還。捕手小林(撮影・浅見桂子)
西武対巨人 4回裏西武2死一、三塁、一走滝沢が二盗を決める間に三走オグレディ(手前)が重盗を決めて生還。捕手小林(撮影・浅見桂子)