阪神が今季2度目の8連敗を喫し、首位ヤクルトに12ゲーム差、2位DeNAにも5ゲーム差をつけられた。防御率1点台の先発伊藤将司投手(26)は8回12奪三振の熱投も、4番村上に先制3ラン、2番山田にダメ押しソロを許して4失点。日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(38)は勝負の分かれ目として、4番村上に初めて投じた内角球に注目した。【聞き手=佐井陽介】

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阪神先発の伊藤将司投手はたった2球の失投を悔やんでも悔やみきれないのではないでしょうか。

0-0の3回裏2死一、三塁。ヤクルト4番村上選手に右越え3ランを浴びた場面では、いつ内角を攻めるのかに注目していました。1回2死一塁の1打席目では、外角直球系を4球続けて見逃し三振を奪っていました。2打席目も1球目に外角カットボールを選び、2球目にようやく内角ツーシームを選択。この1球が失投だったのは、大飛球が上がった瞬間に両膝に両手を置いた伊藤将投手の表情からも見て取れました。

内角球を挟みたかった意図は理解できます。1度インコースを意識させないと、外角の変化球など他のボールが効いてきません。ただ、この1球は願わくばボールゾーンで詰まらせるか、ボール球にしたかったはず。極端に言えば、体ギリギリに投げてもいい1球でした。結果はボール1個分ほど甘く入ってしまっての3ラン。村上選手相手に計6球目で初めて投じた「勝負の内角球」が失投となり、相当な後悔が残ったのではないかと想像します。

伊藤将投手は1点ビハインドで迎えた8回裏2死無走者でも、2番山田選手に甘く入った直球を左翼中段席まで運ばれました。とはいえ、4回から7回までは完璧な投球で粘り、8回12奪三振で見る者の心を揺さぶったのも事実。7連敗中の重圧があったことも踏まえれば、どう考えても責められる内容ではありません。またしっかり気持ちを切り替えて次回に臨んでほしいと願います。

ただ、チームとしては首位ヤクルトを相手に大黒柱の青柳投手、安定感抜群の伊藤将投手でも連敗を止められなかったのは痛すぎます。この日は失策こそありませんでしたが、3回に島田選手が右中間への飛球を捕りきれず、三塁打にしてしまう場面もありました。重いムードに影響されているのか、慎重にプレーする選手が増えているように見える点も心配です。

8連敗の中にも前向きな要素はあります。不振に苦しんでいた佐藤輝明選手は逆方向への強い打球が増えてきました。大山選手や中野選手も今週中に復帰できる見通しです。負の流れを打破できるのは選手だけ。今こそ思い切ったプレーを楽しんでほしいものです。(日刊スポーツ評論家)