日本ハムの先発上原の投球が気になった。1、2回の攻撃で大きな好機をつぶした後、相手に流れを渡したくない場面で、3回の先頭への四球。1、2回のマウンドと同じようにスッと入ろうとしたと思うが、ここは勝負どころで、全部勝負球くらいの気持ちで行くところだった。

まだ試合は動いていなかったが、相手は絶体絶命のピンチを2度しのいで、先頭の安打や四球は当然、攻撃のリズムに乗りやすい。そこでいきなり3ボールで結局カウント3-1からの四球は、先発を任されている投手としては、もっと勝負勘を敏感に養ってほしいなと感じた。ピンチを招いた後くらいの集中力で、絶対に走者を許さないという姿勢がほしかった。

同点にした直後の4回も、先頭に四球を与えた。「先頭打者を出さないように」とよく言うが、特にポイントになる場面がある。なぜ四球を出したのか、技術なのか考え方、攻め方なのか、次のチャンスがあれば整理して臨んでほしい。

もう1点、変化球の時、腕がゆるむところがある。腕を振って投げた球と違って、腕のゆるんだ変化球は打者目線で言うと何かを感じ取ってバットが止まる。緩みが打者に伝わっていて、象徴的だったのは3回、西村に2-2からのフォークを三塁打にされたが、コース、高さ、落ち方は悪くないのに完璧に拾われている。左で150キロを投げられるスケールの大きな投手なので、もったいないと思う。今後の課題として、修正してほしい。

守備では万波に隠れたファインプレーがあった。8回無死一、二塁で吉田正の右翼フェンス直撃安打の場面。二塁走者からいうと、無死なのでタッチアップ優先だが、そこに走者として落とし穴がある。打球は明らかにフェン直なのだが、どこかにタッチアップ優先だから、右翼手が捕ったときに戻らなきゃいけないという心理が働く。あの場面で万波が早めに左手のグラブを上に出していて、雰囲気的に捕球できるような感じを出していた。グラブを出すタイミングが絶妙でランナー心理を揺さぶった。

走者としては、右翼手がランナーに背を向けてクッションボールを処理する体勢に入った瞬間にスタートを切るが、万波はギリギリまでその体勢に入らなかったから、二塁走者福田の進塁を三塁で止めた。結局無死満塁で失点せず、大きなプレーとなった。万波の遊び心が守備のいい形に出ていて、それがBIGBOSSイズムといえる。(日刊スポーツ評論家)