阪神鳥谷は当時、早稲田ブランドをよく理解していなかったらしい。「あいつ、早稲田がどれだけ名門なのか、よう分かってなかったからな。ビックリしたで!」。以前、聖望学園の岡本幹成監督が豪快に笑って振り返ったことがある。高校時代の鳥谷はそれだけプロ入りだけを見すえていた、ということなのだろう。

 高校3年夏、鳥谷は最後までプロ入りの可能性を模索していた。最後は指名されたとしても下位が濃厚となり、岡本監督の勧めもあって早大進学を決断。その後、東京6大学でスター選手に上りつめ、プロから引く手あまたの選手となったのはよく知られた話だ。結果的に、大学進学という決断は鳥谷の潜在能力を最大限に引き出した。自分の学費を捻出するために母親が働き始めたこともあり、「これはもうプロに行くしかない」と腹をくくり、今につながる猛練習の日々が始まったというのだから。

 さあ、26日の運命のドラフト会議。指名されてスポットライトを浴びる選手に隠れ、人知れず悔し涙を流す選手も出たことだろう。そんな選手たちの「逆襲の進路」にも、ひそかに注目しておきたい。【阪神担当 佐井陽介】