5月から内勤が主になった。1週間もしないで分かった。野球は球場で見るに限る。

 毎日テレビでフルゲームを見るわけだが、得られる情報はそう多くない。

 主な構図であるセンターカメラからの映像では、配球の意図と、投手がどこまで要求に応えられているかまでしか分からない。

 スピードガン表示や配球図、今はボールの回転数などでも情報をアシストしているが、球場に行けばミットの音でボールの伸びが分かる。テンポやロジンを触るしぐさで調子を推し量れる。イニング間にベンチ前で行うキャッチボールも大事な情報。自軍の攻撃によく目がいっている投手は、直後に崩れるケースが多い。「援護が欲しい」という不安の裏返しが、無意識の行動となって表れている。

 得点圏に走者が進むとカメラが切り替わり、定位置からどのくらい守備陣形が動いているかを俯瞰(ふかん)で映すケースがある。それでも、1球ごとに変わるベンチの深謀をつかむには、情報として足りない。試合状況によって半歩の単位で指示を出す。その半歩で打球に追いつき、アウトになったりする。

 評論家の三浦大輔氏は、野球という競技を「流れのスポーツ。グラウンドに絶えず流れている勝負の空気を、どちらがつかむかを争っている」と説明したことがある。「空気は見えないですね」「見えないけど、感覚としては確実にあるね。スタンドを含めた空気、雰囲気をどうやってこちら側に持ってくるか。ファンの声援もすごく大きい」。球場に足を運ぶすべての人が空気を作り、空気は絶えず、どちらに流れようかと漂っている。そこにいないと分かる訳がない。

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 15日は遅番のシフトだった。昼下がり、日本ハム-西武が行われる東京ドームに行った。

 日本ハムの栗山監督は、練習前の囲み取材を1日も欠かしたことがない。輪の大外で聞いていた。目の前を杉谷が通った。元気よくあいさつし「監督、関東はボクの地元です。東京ドーム、神宮、横浜スタジアム、メットライフ、幕張だって。どこでも使って下さい!」と笑わせた。栗山監督は「どんな時も下を向かず、明るくハツラツとしていることって、野球に限らず大切だよね。みんなもそうでしょう」と見渡して、清宮の話題に移っていった。

 清宮のフリー打撃を、三塁側カメラマン席の上方から見た。東京ドームは今や最も狭い部類になったが、それにしても気持ちよく飛ばしていた。特に逆方向が胸をすいた。大谷も同じ所へ放り込んでいたっけ。飛距離は遜色ない。あのフリー打撃を見て、心躍らない人はいない。気分よく会社へ向かった。

 テレビで清宮の二塁打を見た。温かく育ててもらっている。無安打が続いていたのは不調ではなく、単なる慣れの問題。すぐ2号を打つだろうな。いくつか思いが巡った。やっぱり球場はいい。【宮下敬至】


 ◆宮下敬至(みやした・たかし)99年入社。04年の秋から野球部。担当歴は横浜(現DeNA)-巨人-楽天-巨人。16年から遊軍。