9回表ソフトバンク無死、ナインとグータッチを交わしマウンドに上がる岸田(中央)(2019年9月29日撮影)
9回表ソフトバンク無死、ナインとグータッチを交わしマウンドに上がる岸田(中央)(2019年9月29日撮影)

またオリックス海田の涙目を見ることになった。9月29日の今季最終戦、ソフトバンク戦(京セラドーム大阪)は、岸田の引退試合にもなった。9回、先頭のソフトバンク高田を3球三振に取った岸田を見送り、海田は「また、いなくなってしまう」と泣き笑いのような表情を浮かべた。17年オフにダイヤモンドバックスに移籍した平野同様、岸田はオリックス投手陣にとって頼れるお兄ちゃんだった。

熱くて温かい岸田の人柄を映すかのように、いい引退試合だった。守護神時代と同じ、リードした9回に首脳陣は出番を用意。岸田の登場を知らせるアビーチーの力強い歌声が流れる中、マウンドには外野3人を含めた野手全8人が集まった。この日、2軍から招集された履正社(大阪)の後輩、T-岡田の姿もあった。みんなでコブシを合わせて送り出されたかつての守護神は、全球ストレートで高田を空振り三振に封じた。一塁側ベンチからマウンドに向かう際、すでに目を真っ赤にはらしていたが、投げ終えて表情は晴れやかな笑顔に変わった。

オリックスの岸田の引退試合を観戦する左から伊藤光、金子弌大、西勇輝、坂口智隆、近藤一樹(2019年9月29日撮影)
オリックスの岸田の引退試合を観戦する左から伊藤光、金子弌大、西勇輝、坂口智隆、近藤一樹(2019年9月29日撮影)

試合後のセレモニーは、ソフトバンクファンからも声援が飛んだ。「ありがとう!」と岸田も応じた。球場にはチームメートだった日本ハム金子、ヤクルト坂口、近藤、DeNA伊藤光、阪神西も駆けつけた。ビデオメッセージには、13年から15年まで在籍した馬原浩治氏の姿もあった。馬原氏は、ソフトバンクへFA移籍した寺原隼人の人的補償でオリックスにやってきた。常勝球団ソフトバンクのロッカールームの雰囲気、緊張感をオリックスに伝え、それが14年リーグ2位の躍進につながった。馬原氏退団後は、岸田を軸に、支え合い、奮闘する投手チームを作ってきた。

今季は3年ぶりの最下位に沈むなど、なかなか優勝争いに絡めないオリックス。それでも選手たちは、1勝に向けて心を寄せ合う。「オリックスは必ず強くなります。長い長いトンネルを抜けようとしています」と、岸田はファンに惜別のメッセージを残した。体のあちこちの故障に苦しみながら、頼れるお兄ちゃんであり続けた岸田の現役最後の試合を見て、来季への希望がぽちっとともった。【遊軍 堀まどか】

引退試合でナインから胴上げされる岸田護(2019年9月29日撮影)
引退試合でナインから胴上げされる岸田護(2019年9月29日撮影)