引退パーティーで大体大・中野監督(左)から花束を受け取る上原浩治氏(撮影・加藤哉)
引退パーティーで大体大・中野監督(左)から花束を受け取る上原浩治氏(撮影・加藤哉)

大阪・熊取町の大体大グラウンドにたどり着く。上原浩治の練習が終わるのを待つ。取材を終えると「食堂に行きましょうよ」となる。学生食堂に場所を移し、上原は自宅から持参した母手製のおにぎりをスポーツバッグから取り出す。学食の唐揚げをおかずに、おにぎりをほおばりながら、夢を語った。プロに行きたい、メジャーリーガーになりたい…。

どちらの夢も見事にかなえて、上原は今年5月、現役を引退した。

今月8日、大阪市内のホテルで大体大主催の引退パーティーが開かれた。現役時代より少しふっくらしたスーツ姿で登壇した上原さんは、先輩、後輩からの質問に軽妙な答えを返し、場を盛り上げた。

現役時代の一番の強敵は、デトロイト・タイガースのカブレラと阪神金本。日米のトラの主砲だったそう。「巨人1年目の監督だった長嶋茂雄さんの思い出は?」と問われたときには「1年目のぼくはずっと“二岡”と呼ばれていました」と返し、場内をどっとわかせた。

笑いを取る答えもあれば、野球への思いを込めた答えもあった。大体大OBには中学、高校の教員が多い。指導の現場にいる先輩、後輩に「勝つ喜び、負ける悔しさは、必要。野球を楽しむだけでは、うまくはなりません」と語りかけた。開会直後に流れたプロ生活21年を振り返る映像には、巨人での輝かしい成績、レッドソックスでワールドシリーズ胴上げ投手となった晴れ姿がある一方で、打ち込まれ、天を仰ぎ、悔しさにほえる昨年の姿もあった。

全力で喜び、全身で悔しがっていたマウンドの姿が懐かしい。トレーニングも今はしておらず「子どもとキャッチボールしようにも、ボールが投げられないんです」と苦笑した。もし将来、巨人時代の盟友で監督でもあった高橋由伸氏の引退試合が行われるようなことがあれば、マウンドには上原浩治に立っていてほしい、と伝えている。【遊軍 堀まどか】

マウンド上で感情を露わにする現役時代の上原浩治氏
マウンド上で感情を露わにする現役時代の上原浩治氏