オリックスの春季宮崎キャンプ地、SOKKENスタジアムには、もう菜の花が揺れていた。球界でキャンプが始まって10日あまり。広島野村、ヤクルト村上ら主力選手の故障離脱は残念だが、大きな事故はない。「まずまず平和な2月か…」と思っていた矢先、野村克也氏の訃報が飛び込んできた。

つい先月、オフのパ・リーグ企画で元阪急の山口高志さん(69)を取材した。南海を相手にプロ初勝利を挙げた翌日、山口さんは紙面に掲載された敵将、野村監督のコメントを目にした。「『山口は、球数を放っていった方が、逆に力がついてくるな』というノムさんの言葉を読んで、ぼく自身、まっすぐに手応えを感じて、これでいきたいなと思えた」と振り返った。それが「“野村克也監督”の言葉だったから」と。名捕手、大打者、指揮官と3つの顔を持つ野村さんの言葉だったから、支えにできた。山口さんが伝説の剛腕となっていったのは、野村さんの言葉の力も大きかった。

この人に認めてもらえた、と自信にできる野球人。後に続く人間の道を照らした存在。そんな人がまた1人、球界からいなくなった。【遊軍=堀まどか】