21年度版「理想の巨人打線」の完成型に近づいた。巨人は14日、東京ドームでDeNAから国内フリーエージェント(FA)権を行使した梶谷隆幸外野手(32)と井納翔一投手(34)の入団会見を実施した。同席した原辰徳監督(62)は1番梶谷から始まる理想の上位打線案を披露。井納には先発ローテーションの一角としてのフル回転を期待した。巨人は来年3月26日の開幕戦で、2人の古巣DeNAと対戦する。

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仰天要求を真顔で訴えた。6日の巨人との初交渉で井納は球団首脳に向かって言った。「僕はベイスターズで『宇宙人』の愛称でファンの皆さんに親しんでもらった。もし移籍を決断したときにはジャイアンツでもキャラクターを継続したい」。金銭面、待遇条件などは一切の要求はなかった。一方でファンへ向けた自身のキャラ設定は強いこだわりを見せた。

断食中に「空腹の宇宙人」として巨人入りを決断。神経と感性を研ぎ澄まし、井納特有の特別なパワーを醸し出しながら新天地を決めた。ただ、この日の会見は緊張のあまり「地球人」と化した。会見前は熱血プロ野球の出演などアピールポイントをまとめていたが「頭が真っ白になって何も出てきませんでした。すごく緊張しました」。与えられた背番号21の歴代OBを予習して臨んだが、披露するまでには至らなかった。

奇想天外な発言や行動が「宇宙人」ではない。どこまでも純粋に少年の心を持ち続けている。打たれた試合後に取材中に号泣したり、マウンドに拳をたたきつけたりした。“素”を貫く井納だから宇宙規模のスケール感が生まれる。【為田聡史】

15年7月10日、敗戦投手となり目を潤ませながら球場を後にする井納
15年7月10日、敗戦投手となり目を潤ませながら球場を後にする井納