柔和な目つきが、鋭くなってきた。オリックスのドラフト1位山下舜平大投手(19)が、新人年は「土台作り」をテーマにファームで奮闘している。今季は2軍で11試合に登板して1勝6敗、防御率5・31となっている。

「結構、勝ちにこだわってやってきたんですけど、前半は1勝6敗…。ただ、結果は結果。後半は考え方を変えて、(先発日以外も)どうやったら勝てるのかを考えています」

目指すのは“勝てる投手”だ。理由は明確にある。「宮城さんみたいになりたい。(投球の)タイプは全然違うんですけど、レベルの違いを感じています。去年、宮城さんは(2軍で)6勝している。高卒1年目でもあれだけやっている。自分も比較しながらやっています」。今季1軍でリーグトップタイの9勝をマークして大ブレークしている宮城は、プロ1年目の昨季、2軍で13試合に登板して6勝2敗、防御率2・72だった。山下と宮城は球団寮の部屋が隣で「(寮の)お風呂で会ったときなどに、変化球について聞いたりします」と貪欲に質問しているそうだ。

山下は、7月23日ウエスタン・リーグのソフトバンク戦(舞洲)では5回を98球で1失点。勝ち星こそ付かなかったが、好投を見せた。試合後は「課題はめちゃくちゃあります」と滴る汗を拭った。“プロ初勝利”を挙げた6月23日広島戦(舞洲)で新球種のフォークを解禁したばかりだった。「榊原さんに『フォーク投げてみたら?』と。真っすぐの感じで、指の握りを広げる。腕を振らないと落ちないですけど、投げやすい。その後、斉藤和巳さん(元ソフトバンク)のフォークを見習ってみた」と探究心で進化を止めない。

ただ、1カ月後には「手応えをつかみかけたんですけど、やっぱり難しい。追い込んでからファウルで粘られることが多くて、決めきれない…。(7月23日は)チェンジアップを投げました。ダルビッシュさんの動画を見て、まねしてみた。投げやすいのが一番いい」と、またも新球種を導入した。

入団時の球種は直球とカーブのみで話題を集めたが「元々、直球とカーブだけでは厳しいだろうと。入団したときから、変化球を増やそうと思っていた。ただ、あくまでも軸はストレートとカーブ。フォークやチェンジアップは、その2つを生かすために、打者の頭に入ってくれれば」と素材型の高卒ドラフト1位は率直に話す。

挑戦あるのみだ。「僕には、元々の感覚がないんで、開き直れる。(変化球の)ベースがないので、失敗してもいい。自分流があると、そこに戻したくなると思うけど、自分にはない」。

小林2軍監督は「まだまだ精度や技術的には…ね。このまま、土台作りを継続して、これから身につけていってほしい」と見守り「ケガなく、100球近く投げられているのは良いですよね。ボールの質は元々良いので、どんどん成長してくれたら」と期待も寄せる。

山下は189センチ、93キロ。プロ入りまで「ウエートトレーニングはしたことがない」と伸びしろ抜群の右腕は「ウエートを始めた成果が出てきた。体重は変わってないですけど、私服は結構、小さくなってきましたね」と目を細める。

02年生まれの19歳。コロナ禍で昨夏の甲子園大会は中止。数々の思いを背負い、こんがり焼けた肌で大舞台を見つめる。【オリックス担当=真柴健】