ソフトバンク石川柊太投手(29)のマインドには、心を打たれることがある。いつも未来のことにしか目を向けていない。

登板前日の取材で「前のことは忘れました」と言うことがある。勝敗に関係なく、いい投球だろうと悪い投球だろうと、キッパリとその場で心を切り替える。

「投げ終わった瞬間から次の試合を考えているのでホッとする間もないです。(前回の投球が)だめで、次は良かったっていう経験がある。逆に良くて、次がだめならだめだっていう危機感もありますから」。

悪い投球内容なら、当然切り替える要素は必要になる。ただ、いい投球だったならそのイメージを継続すればいいのでは? とも思ったが「勝って兜の緒を締めよ」の精神とはこのことだと思った。

昨季は最多勝と最高勝率の2冠。それでも「去年はできすぎだった」と謙遜する。「去年の成績を過信しないように。去年のイメージで今年がだめだと、確実にギャップが生まれる。『今年は今年で』と忘れて、今年はこんなもんだろうと思うようにしたい」。

今季は援護点に恵まれないこともあり、3勝8敗、防御率3・29という成績で中断期間に入った。工藤監督は「かみ合えば勝敗の数が逆転していたかもしれない」と、右腕の奮闘ぶりには評価している。中継ぎに配置転換されることもあったが、11度のクオリティースタート(6回で自責3以下)は立派な数字だ。常に前を見続ける石川が、報われる後半戦であってほしい。【ソフトバンク担当=只松憲】