開催中の東京オリンピックで躍動する選手を見て、抱く気持ちは何だろうか。手に汗握って緊張を共有したり、人生をかけたプレーに感動したり。楽天滝中瞭太投手(26)は学生時代、五輪を「この人たちすごい」と思って見ていた。それが今は「尊敬」の念に変わったという。

今大会で特に印象に残ったのが、卓球混合ダブルス水谷隼&伊藤美誠組の大逆転劇。ドイツ組との準々決勝では最終ゲームで最大7点差をつけられ、7度マッチポイントを握られながら追いつき、追い越した。あきらめない精神が素晴らしかった。多くの人がそう感じたと思う。けれど滝中の視点は少し違った。

「ただ同じこと、自分がやれることだけをやってるって感覚。それを本当にやり抜いた結果なのかなと。僕の解釈ですけど。追い詰められても自分たちのことをやり抜くってすごい。あきらめる、あきらめないの次元じゃないのかなと思いました」

勝利の瞬間、糸が切れたように伊藤が涙した。それほど張り詰めた状態でも試合中は表情を崩さなかった。「すごく集中力の高いところでやっていて、かける思いの強さを感じました。僕はまだそこまでいけてない」。プロの世界に身を置いて2年目。ただすごいと思っていたオリンピアンたちの何がすごかったのかを知った。

滝中はシーズン前半戦で5勝を挙げた。毎試合に懸けている。「この試合がダメだったら。それが引退試合じゃないですけど、いつもそれくらいの気持ちでいかないと今の立場にはいられないと思っています」。プレッシャーがかかる場面でも、自分のパフォーマンスを出すことが最優先。いざという時「やり抜く」ために、何でもない日々の練習にいそしんでいる。【鎌田良美】

東京五輪卓球混合ダブルス表彰式で金メダルを手にする水谷隼(左)、伊藤美誠組(7月26日撮影)
東京五輪卓球混合ダブルス表彰式で金メダルを手にする水谷隼(左)、伊藤美誠組(7月26日撮影)