阪神2軍がウエスタン・リーグ中日戦(ナゴヤ)に勝利し、引き分けを挟んでの連勝を「16」にのばした。7月30日のオリックス戦から、3カ月またいでファーム日本新記録を樹立した。

実は13連勝の直後、プロアマ交流戦で“連敗”している。8月28日には四国IL徳島に1-6、翌29日には大商大に4-8と完敗。徳島戦で先発し5回1失点だったドラフト3位佐藤蓮投手(23)に対して、平田2軍監督(62)は「初球スライダーかカーブから入るやろ。打たれてもええやん、どんどんストレートを投げてほしい。小手先でやられると何の成長もない」とバッサリ切った。

これまでは、持ち味の直球主体で四球を出しても「四球はええねん。腕振ってしっかり投げることが大事」とOKとしてきた。将来を見据えるから結果ではなく、消極的な姿勢やイージーミスに厳しい。投手なら四球、野手ならバントミスなどの細かいプレーだ。

「うまい選手より強い選手を作りたい。1軍の勝負どころで結果を出せるような」。勝ち続けても、この根底の部分はぶれなかった。あの“連敗”があったから、あらためて2軍選手がすべきこと、目指すべき場所を再確認できた。

コーチ陣にも、もちろん浸透している。平野恵一2軍打撃コーチ(42)は言う。「みんな自分の良いところをのばしてほしい。なんとか1軍の戦力になれるように後押ししたい」。後半戦は小野寺暖外野手(23)、島田海吏外野手(25)が1軍へと巣立った。いずれも強いライナー性の打撃を体に染みこませ、2軍では打率3割を軽く超え、優勝戦線の1軍に求められた。

「もう上に行った選手は見られないから。いいやつは放っておいてもいいからね。それより悔しい思いをしている選手をなんとかしたいね」。同コーチをはじめ、選手に寄り添い個性をのばす土壌が鳴尾浜にはある。

2年目の井上広大外野手(20)、ドラフト7位高寺望夢内野手(18)が故障離脱し小野寺や島田、小幡竜平内野手(20)が1軍に帯同する今、この日のスタメンで1軍実績のない「若虎」といえるのは、「8番捕手」栄枝裕貴捕手(23)、「9番二塁」遠藤成内野手(19)ぐらいだろう。ジェフリー・マルテ内野手(30)やメル・ロハス・ジュニア外野手(31)が調整として中軸に座り、打線が分厚くなった日もある。中堅が並ぶオーダーに「勝って当然」の声もあるかもしれない。ただ、平田2軍監督は連勝中、何度も言った。

「ファームとはいえ、こういうプレッシャーのかかるようなところじゃないと力はつかない」

1日広島戦で8回無失点に抑えた2年目の西純矢投手(19)、この日先発し5回無失点のドラフト5位村上頌樹投手(23)にとっては、少なからずプレッシャーがあったはず。育成の牧丈一郎投手(21)は連勝期間中3勝を挙げた。2軍で勝ち続け、緊張感の中で“強い選手”が育つと考えれば、この連勝記録が持つ意味は大きい。そこから1軍を経験する選手が増え、その新陳代謝が戦力層を厚くしていく。今季はもちろん、来年以降を見据えても明るいニュースであることに違いはない。【阪神担当=中野椋】

ウエスタンリーグ中日対阪神 9回裏中日2死、浜地(中央右)は石岡を三振に仕留めで勝利しナインとマウンドでタッチする(撮影・加藤哉)
ウエスタンリーグ中日対阪神 9回裏中日2死、浜地(中央右)は石岡を三振に仕留めで勝利しナインとマウンドでタッチする(撮影・加藤哉)