広島の今シーズンも残り10試合を切った。林晃汰内野手(20)は5月下旬、チーム内に起きたクラスターを機に三塁1番手の座をつかんだ。高卒3年目とは思えないほど、どっしりとした足腰で、レギュラー争いの土俵を割ることはない。

これまで何度も先発落ちの危機はあった。ただ、徳俵に足をかけるたびに、1歩前進する一打を放ってきた。9月までに4試合連続無安打を1度、3試合連続無安打を3度経験した。だが、先発で3試合以上の連続無安打を記録した後は必ず、無安打が続いた試合数以上の連続安打を記録して挽回した。1試合1安打に終わった31試合のうち、11試合が最終打席で“タコ”を回避する一本だ。「本当、いつもギリギリのところで何とか結果を残せている」。粘り腰のうっちゃりで、先発落ちの危機も投げ飛ばしてきた。

打席の中で四股を踏むように腰を落とす動きを見せることがある。結果を求めすぎると、上半身主導で打ちにいこうとする癖を解消するためだという。器用なタイプではない。「僕、人のまねができないんですよ。ほかの選手は有名な選手のフォームとか上手にまねしたりするじゃないですか? あれ、全然できないんです」。違う打者の打撃フォームをまねる選手をよく見る。中には感心させられるほどうまい選手もいる。だが、人のまねができないからこそ、林は自分にあった形をひたすら体にたたき込むしかないのだ。

10月に入り、プロ最長となる6試合連続無安打を味わった。9月までのように無安打が続いた分だけ、挽回するほど安打も続かない。14日時点で打率は2割7分7厘にまで落ち込んだ。今年初めて1軍に定着した立場を考えれば、十分な数字ではある。ただ、飛躍のきっかけをつかんだシーズン最後に、もうひと踏ん張りを期待したい。【広島担当 前原淳】