とても変な感じだ。非常にありがたいことに、18年からソフトバンク担当になり、昨年までの3年間はすべて日本シリーズを現地取材し、日本一の瞬間を見ることができていた。だからだろうか、テレビでぼんやりと見るオリックス-ヤクルトの日本シリーズにはなんとなく、現実感がないように感じる。例えるなら、あらすじを知らないテレビアニメの最終回を見ている時の感情に似ているだろうか。

そんなわけで、8年ぶりの4位に終わったソフトバンクを追いかけ、秋季キャンプの地、宮崎に来た。春には何度も来ているが、秋の取材は未体験だ。若手たちがしのぎを削り、春の宮崎とは全く違う「未来」「希望」が詰まった期間になっている。

この秋から指揮を執る藤本新監督の口からは、就任会見の時からいろんな“新戦力”の名前が出る。キャンプでも変わらず野村、水谷、増田、奥村…さらには育成選手までも。「高いレベルでの競争をしてもらいたい。だから、今までの監督はあまり名前を出さなかったと思いますけど、ぼくは出していきます。出した選手は目の色変えてやってくれているんでね」と、意識的にそうしているようだ。実際に、2軍、3軍監督時代に接している指揮官のハッパに応えようという、若手たちのアピール合戦は熱い。

藤本監督の「名指し」は我々マスコミにとってもありがたい。実績のない選手の立ち位置がイメージできるし、監督が名前を挙げるなら、と次の日に注目してみて、記事にすることもあった。今まであまり気づかなかった若鷹の魅力にもたくさん触れることができた。22年の日本シリーズでは、この秋に宮崎で見た誰かが躍動しているかもしれない。【ソフトバンク担当=山本大地】