交流戦期間に、近本光司外野手(27)がふと見せた笑顔が、忘れられない。5月31日、甲子園での試合前練習後。ロッテ佐々木朗希投手(20)との対戦の感想を聞いた時のことだ。

「楽しかったですよ。2打席目の最後のインコースは、身の危険を感じましたね。『あああああ!』って。手が出なかったとかじゃないです、『危ない』って思いました」

取材エリアで立ち止まり丁寧に答えてくれたと思いきや、なかなかのボリュームで「あああああ!」と発した背番号5に、こちらも笑わないわけにはいかなかった。冗談ではない。本気で、かつ笑顔だった。

プロでも「身の危険を感じる」ほどの直球。ましてや、昨季セ最多安打のタイトルをとった男の言葉だ。これほど分かりやすい佐々木朗の「直球評」があるだろうか。

近本が振り返ったシーンは5月27日ロッテ戦(ZOZO)。3回2死、2ボール2ストライクの場面。内角160キロ直球を見逃し、三振に倒れた。6月13日現在、近本は38三振しており、そのうち見逃し三振はわずか6。もともと三振が少ない打者。見逃し三振も珍しい。身の危険を感じたから振れなかったと言われても、どこか納得してしまう。

「正直、打てなくても全然いいと思う。ただ、佐々木朗希君の球を見る。あのマウンドとバッターボックスの間で勝負ができるのは、すごく楽しみだなと思います」

対戦前の言葉通り、佐々木朗との対戦は3打数無安打に終わっている。ただ、その翌日から12日オリックス戦まで自身プロ最長の14試合連続安打を継続中。18.44メートル先の佐々木朗から味わった恐怖と興奮が、近本に刺激を与えたのではないか-。抑えられても笑顔になれるほどの勝負だったから、そう思わずにはいられない。【阪神担当=中野椋】