新任の2軍監督にフォーカスする。第1回は巨人阿部慎之助2軍監督(40)。

4日、クールダウンする巨人モタ(右)とグータッチする阿部2軍監督
4日、クールダウンする巨人モタ(右)とグータッチする阿部2軍監督

キャンプインからちょうど1週間が過ぎた頃だった。阿部2軍監督は、毎日行う練習前のミーティングで選手たちに言った。「いろんなことを試していこう。チャレンジすることが大事。ダメだったらやめればいい」。連日テーマを確認するのが決まり。この日は自身にも言い聞かせるかのように「挑戦」を求めた。

直後のブルペン。若手投手に歩み寄ると投球中の3投手にそれぞれアドバイスを送った。高卒2年目の直江には「ノーワインドアップの時、左足の引き方を真後ろから左斜め後ろにしてみたら」。育成の田中優には「プレートの位置を一塁側にしてみたら」。同じく育成の山川には「チェンジアップの使い方」について個人レッスン。山川は「今までは左打者の外に逃げるイメージだったが、インコースを使えと教わった」。ブルペン投球後、もう1度監督の元に駆け寄り「こんないい機会はないし、ガツガツいきます」と教えを請うた。

アドバイスは強制ではない。挑戦は後押しする。一方、捕手目線で投手陣には常に実戦を想定した投球を求める。「四球は反省できない」という考えからブルペンに最低限のルールを設定した。試合中は走者を背負う場面が多いため、まずはクイックで直球を投じ、ストライク連続5球。その次はゆっくり足を上げ、変化球でストライク連続3球。クリアしたら自由な投球練習を許している。

改革はブルペンだけではない。2、3軍合同の大所帯のキャンプでは、練習時間の確保が困難を極める。早出組は午前7時半に、本隊も同8時過ぎには宿舎を出発。ウオーミングアップは各自で行い、練習メニューの効率化を図った。時間を要する打撃練習の時間も拡大。1軍優先の室内ドームは夜間であれば自由に使える。練習量が減る雨天時には夜間練習で補った。

昨年から2軍を指導するコーチ陣も阿部改革を実感している。村田2軍野手総合コーチは「練習量が2、3倍に増えた。僕らが現役の時もやらされたのかもしれないけど、やったからこそ、十何年間続けてこられた」と改めて共感した。杉内2軍投手コーチは「打者はこういう考えをするとか打者目線で言ってくれる。僕らには分からないこと。選手も僕自身も勉強になっている」と実感している。

1軍が14日に沖縄に移動してからは2、3軍を振り分けた。練習量の確保に加え、競争意識を持たせる狙いが大きい。2軍には伸び盛りの若手をそろえ、少しでも体に不安を抱える選手は3軍へ。その中でも例外で2軍キャンプスタートながら1軍の紅白戦に出場していた吉川大らが3軍に置かれた。信頼するからこそ、3軍の手本として、すぐに1軍に呼ばれてもいいように独自調整させる。阿部2軍監督は「任せてある。でも実戦は全部2軍に呼ぶよ」と優しく言った。

「おらぁー」と怒鳴ることもある。昭和感満載のスタイルに見えるが、最も現代風の指導なのかもしれない。才能の芽を開花させるのが2軍監督の役割になる。自身が輝いたあの場所に、1人でも多くの若手を羽ばたかせる。【久永壮真】