侍ジャパン24人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる連載「侍の宝刀」。阪神梅野隆太郎捕手(30)は、今季12球団屈指の得点圏打率を誇る。捕手としての能力はもちろん、大舞台でもここぞの場面で勝負強さを発揮する。

6月18日、巨人戦で適時二塁打を放つ阪神梅野
6月18日、巨人戦で適時二塁打を放つ阪神梅野

「得点圏の鬼」。梅野が打席に立つと、SNS上はそんな言葉で盛り上がる。7日時点で、打率はリーグ最下位26位の2割5分ながら、得点圏打率になればリーグ2位の3割8分8厘まで上昇。5月は驚異の5割台まで到達し、他の追随を許さなかった。「梅ちゃんバズーカ」と呼ばれる強肩に高いブロッキング技術。捕手として堅固な守りが目立つが、プレッシャーがかかる場面ほど、バットの輝きは増す。

広島会沢が故障で辞退し、代役として侍選出が発表されたのは6月18日。「本当に光栄。いい緊張感、プレッシャーと闘いながら、自分らしさをどんどん出せるようにしたい」。活躍を誓った直後の巨人戦。2回1死二塁から、メルセデスのスライダーを三塁線に引っ張る適時二塁打をマークした。栄誉も重責に感じず、むしろパワーに変えることが出来る。

今年で節目の30歳。年を重ねるごとに、打率への考えは変化した。「ずーっと若い時は2割5分は打ちたい、最低でも打ちたいって言っていた」。正捕手に定着し3年連続でそのノルマはクリア。勝利にこだわりチームのことも考えられるようになった今、意識したのは「勝負強さ」。

「勝負強いっていうイメージをつけることは、本当に難しいことでもあり『こいつやったらやってくれる』という期待値が、ファンの見る楽しさでもある。プロとしてはすごくうれしい」

打席に立てば、打ってくれる-。ともすれば、プレッシャーにも感じそうなファンのワクワク感。梅野はそれを強く望み、意気に感じることが出来る。聖地を本拠地にしてプロ8年目。12球団屈指の熱狂的な声援に囲まれて、強靱(きょうじん)な打者へと育った。 ここぞの場面で光る打撃とメンタルは、大舞台でも生きる。国際大会の独特の雰囲気の中、代打で一発勝負の場面でも、重圧をものともせず、得点につなげるはずだ。

今季は主に7、8番に座ってきたが、昨季はプロで初めて2番も務めた。場面に応じた「勝負強さ」も持ち味だ。追い込まれてからも粘って四球を選べる出塁力。そして、捕手では両リーグトップの6盗塁を決める走力。絶妙なコントロールで打球の勢いを消すバントもお手のものだ。

プロでは初めての日の丸。五輪でも「得点圏の鬼」と化す。【磯綾乃】